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PRODUCTS STORE

PRODUCTS STORY

村上雄一 × PRODUCTS STORE
たっぷりな座談会

01 よりみちの中で掬い上げるものたち
02 新しさは、遊びと脱線の先にある
03 目的地に向かったのに、道が逸れた話の方が覚えてる
04 あの人から見た、陶芸家・村上雄一

<今回の参加者>
陶芸家 村上雄一
株式会社ユープロダクツ 代表取締役 平子宗介
PRODUCTS STORE 店長 長山晶子
インタビュアー・編集者 笹田理恵


2021年12月2日からPRODUCTS STOREで「村上雄一」展が始まります。何年もお付き合いのある間柄ですが、改めてものづくりのこと、産地への思いや最近の関心事、そして展示のメインとなるDanceシリーズについてたっぷりお話させていただきました。

【村上雄一 × PRODUCTS STORE
たっぷりな座談会】
01

よりみちの中で掬い上げるものたち

まず、今回の展示会の「DANCE」シリーズ。企画のきっかけは?

村上 : 最初は、ワークショップをメインでできたらと思っていたんです。でも、コロナ禍なので代案として「編み込み」をフォーカスしても面白いかと思ったけれど、そっちのテンションが下がっているときに「こんなのもあるんですけど」って提案しました。

その時、すでに実験的にDanceを作られていたんですか?

村上 : そうですね。10年前に試していた作品で、熱が冷めてしまっていたんです。

村上 : いろいろ試しているうちに目や鼻がついたし、この技法だからこその中国茶のアイテムやオブジェもできるかなって。制作期間が10日くらいしかないけど、いろいろやってみようかな。

10年前に、Danceシリーズが生まれたときのきっかけは?

村上 : 僕は元々、沖縄でやきものをやっていたので陶器で化粧掛けして、薪窯で焼いていたんですけど、こちらに来て意匠研2年目に磁器に出合った。そうしたら全く別の素材だったんですよ。磁器の良さは清潔感もあるんですけど、作るときの個性の違いでは「伸びる習性」がある。「ろくろで挽いたやつを土が踊るように伸ばしてみたらどうなるかな」と思ったら「あ、伸びた、おもしろーい」って。笑

宗介 : 当時の反響はどうだったんですか?

村上 : 一応個展には出したんです。反響はぼちぼち。ただDanceシリーズよりも他の仕事の方が楽しくなって、そのまま。

PRODUCTS STOREの店長として、Danceシリーズで企画が決まった時、長山さんはどう感じましたか?

長山 : 村上さんが楽しそうだったので。村上さんが楽しいと感じることを絶対にやった方がいいなと。その方が楽しい個展になるだろうと。

宗介 : それがPRODUCTS STOREの立ち位置。「産地の中で完結する」という面白みの中に、「その時の作り手のモチベーションが入りきる」のを大事にしたい。本来は何年も前に企画展が決まって、店の都合に合わせると思うんですけど。自由度があるのがうちの魅力になっていくんじゃないかなと。

村上 : 遊ばせてもらっていいのかなって。

そういう関わりができる商社やお店は少ないですか?

村上 : そうですね。PRODUCTS STOREさんも違う角度だからこそできることがある。既存のギャラリーではできないこともできるんだろうな、と。

宗介 : そうだといいなと思っているんですけど、まだ一年なんでこれから頑張ります。PRODUCTS STOREが、作り手さんが安心できる、作り続けられる「一つの要素」になったらいいと思っています。うまく使ってもらえたらいい。

今回の展示会では、Dance以外に定番商品の受注も行います。

村上 : Danceは、マグカップ、ダンスカップやダンスデミ、あとは花器ですね。今回のシリーズに合わせて新しい釉薬も挑戦してみます。あとは、定番の食器や茶器も。「こういう仕事している」と作品の一部を見てもらいます。

宗介 : 定番が置いてあって受注も取れます。個展では、ある物からしか選ばないといけないけれど、オーダーをしたらいつかは手に入る仕組みです。もし毎年こういったリズムでやってもらえたらいいなと考えています。

お客さんはきっと待つのも楽しいはず。この季節になれば、村上さんのあの作品が買えると思いながら生活するのもいいですよね。

村上 : そうですよね、そう思ってもらえたらうれしい。今年は半年待ちか、みたいな。

宗介 : 世の中の便利さに逆行するのが面白い。

村上 : 慣れてもらえたらいいけど。

自然に、この取り組みを楽しみに思える人たちが増えるといいですよね。

【村上雄一 × PRODUCTS STORE
たっぷりな座談会】
02

新しさは、遊びと脱線の先にある

新しい作品が生まれる工程で、実験的なものづくりもされるんでしょうか。

村上 : 主軸があるからこその脱線というか、より遊べる要素があります。たとえば、薪窯だからこそできる冒険もある。分散投資しないと。一極集中は、よくない。

宗介 : 小売りでも全く同じ感覚がある。今は不安定で、チャレンジしづらい土壌じゃないですか。その上、安全に進むためのモチベーションが高いから「企画の焼き直し」が多いんですよ。去年の企画をやっても、そこそこ当たるけど超えていかない。そのバランスがどんどん守りに入っていくと、面白いものが生まれる要素が減りますよね。かといってチャレンジばかりでも、こけたら死んじゃう。そこで主軸があるといい。素晴らしいバランスです。

村上 : やっと、一歩ずつです。

遊びや冒険できる時間を確保する中で、「何がやりたいか」はどうやって思い浮かぶんですか?

村上 : そうですね。でも、やっていることの断捨離もしていて。こないだ「土鍋は、もういい」という心境になったのは、「圧力鍋に負ける、圧力鍋最強」と感じた時に「土鍋なんて作ってらんないよ」って。笑

宗介 : 村上さんのすごい所は常に生活者としての視点がずっとあること。

村上 : 茶器もかわいいだけじゃなくて、これで淹れるとおいしいんですよ。それは長くなるので省きますけど。笑

土鍋が圧力鍋に及ばないと気付いたら、作っているのが楽しくても作らなくていいと思えるんですか?

村上 : なりますね。機能ありきというか。これからは落としても割れない器がいっぱい出てくるじゃないですか。そちらの技術も上がっているので陶磁器産業は危険だと思う。そういった中で、陶磁器ならではの良さにフォーカスしていかないと食器はピンチですよね。

宗介 : 村上さんは、量産メーカーでも働いていらしたので、食器の未来への懸念はあるにせよ、産地について思うことはありますか?

村上 : 土のメーカーが元気なくなったら、良い土を作ってくれるところがなくなってしまう。産地なので、それを必死に支えるためにみんなが頑張ると思うんですけど、組合とかで囲ったりしていかないとより厳しくなるだろうな。

では、産地にいることのメリットはどんな点でしょう。

村上 : 僕がここにいるメリットとしては、土や原料を僕が全部抱えなくてもできて、どんどんトライできし、すぐに相談に乗ってくれる人がいる。そういったメリットは大きい。

宗介 : いま、メーカーさんがどんどん「やめていく時代」になって、多様性が失われていくリスクはありますよね。

村上 : そうですね、新しい物が生まれにくい。たとえば、釉薬を探しているときに、隣にいたメーカーの人たちが口々に「アンティークっぽいね」って言っていて。売れ筋でがんばっていると思うんですけど、本当はメーカーさんって僕たちではとてもマネできない物を作る技術があるじゃないですか。そういう土台も揃っているし。でも、そういったメーカーでも“作家っぽい物”の方が売れる。それが歯がゆい。だからこそ、メーカーの物も値段を上げていくしかないと思うんですけどね。

宗介 : それは全く同感ですね。

村上 : 差別化できるほどクオリティは高いわけですし。

宗介 : 和を乱していくしかないってことですね。そこを諦めて、ちょっと安くすれば売れるという方法が続いちゃったので。

村上 : それはどんどん首を絞めるだけですよね。僕も怒られましたもん。安すぎる!って。

宗介 : 自戒の念をこめて言うと業界にそう言える商社が少なかったですよね。「高すぎる!」って言う商社ばかりで。人件費や原料など製造原価が上がっている中で分かっているのは、現状維持では衰退してしまうこと。

それはどの分野でも言えますよね。飲食業界でも、ランチはずっと安いままですし。

村上 : そう、コンビニとかめっちゃおいしいじゃないですか。資金があって、どんどん新しいことに投資できる企業は強いですよね。ミスタードーナツの店舗が少なくなっていくのはコンビニの影響があるじゃないですか。……ってこれ、昨日も話してたな。笑

変化していくことこそ、産地の課題ですね。

村上 : 結局、新しく業界に入ってきた人が変革を起こしやすいですよね。イーロン・マスクもそうですけど、テスラが全くクルマを作らない会社だったからこそ、ギガプレスとか新しいことができるけれど、メーカーや産地で成り立っていた土壌から新しいことを始める場合は、既存の物をちょっと直すしかできなくて。その「大きく」という変化が今は新素材ですから、怖いですよね。

宗介 : 僕らの緊急の課題として「作り手が元気になるための一助を」という思いはある。イーロン・マスクは難しいにしても、新しい価値観を業界に作っていくことはそれぞれの力が重なり合ってできたらといい。

村上さんは、新しさにつながるアイデアはどんな時に降ってくるんでしょう?

村上 : 僕は、陶歴も長いし、人生半分以上も関わっていると「こういうのできるな」ってイメージを持てるわけですよ。他の物を見ていていても「こうやったらできるな」って分かる。だけど、脳みそを柔らかくして、あんな方法もある、こんな方法もあるんじゃないかといろいろトライしたら、少しずつ乗り越えて突き詰めていける。
この間、燕岳を登りに行った時に、岩がゴロゴロあっても信楽焼にしか見えなくて。もう病気なんですけど。笑 そういう時も自分にあるストックの中で、これとこれを組み合わせたら、これできるんじゃないかな?と考えている。

常にやきものに変換しているんですね。

村上 : してしまう。それはうちの子どもたちの特性を見ていてもそうだけど、同じアニメを見ても、長男は知識をインプットしたり文字を映像化するのが得意で、弟はこういう風に描きたい、形にしたい、ってことばかり考えている。人によって一緒の空間に居ても、全然感じ方が違う。
やきものの場合は、一歩ずつ進んでいって、その都度解決していくやり方です。その先で、ようやく人が作ったことがないものを作れる。そのためには技術や経験、知識も必要。それらが揃った時に、新しいものが生まれる。

いまそれがちょうどノッているところですね。

村上 : ノリノリでしょうね、たぶん。笑

宗介 : 村上さんとお付き合いを始めた頃に、作家さんは大抵作らないスクイザーを作ってきたんですよ。市場に量産品もあるのに、村上さんが考えるスクイザーが出てきて、そういう発想がすごい。トライ&エラーを続けてきた結果だと思う。

村上 : 売れる、売れないは別ですけどね。笑

宗介 : 壁にぶち当たった時に、それを乗り越えることができるかどうかは、その先に見えているものやその先に辿り着く自分の満足感が必要ですよね。産地を見ていると、ものづくりの仕事でその壁を越えないことが自分たちも含めてあるのかなと。それは何故かというと、もっと楽な道を探してしまうから。もっと簡単にやれる方法はないか?って。でも、それって合理的な判断なのかもしれないけれど、そこではないモチベーションが大事なんじゃないかと思う。

5年後、10年後、陶磁器の立ち位置がどうなっているのか分からない。本当はもっと動かなきゃいけないこともあるのかもしれないですけれど。

村上 : そうですね、日常では割れない食器を使って、大手小売店では陶器がなくなっていくかもしれないけれど、料亭で出す器とかの差別化はずっと続いていくでしょうね。自分がどこにいくのかといったら、そっちに行くしか生きる道はないだろうな。

宗介 : 一般家庭で使う物と料亭で使う物。村上さんのものづくりには線引きがあるんですか?

村上 : 食器では、今まではなかったんですけど、差別化して作りたいと思っています。

宗介 : 漫然と「手で作っていれば、それなりに売れた」みたいな時代があったじゃないですか。村上さんみたいに掘り下げてものづくりに向き合っている人じゃないと、今後はやっていけないのかもしれない。

村上 : みんな何かしらの危機感から薪窯をやってみたり、原土だけでやったりしている作家も増えていますし、差別化を図ろうと頑張っている。面白い傾向ですよね。

そういった差別化の動きと使う人のニーズは合うものですか?作り手さんは、そういうところを考えながら作っているのか、そこは度外視で自分たちの作りたい物と差別化を結び付けて挑戦しているのか。

村上 : あーーー、半々ですけど……食べていくためにやきものやるのか、楽しくてやっているのか、そこの線引きって難しい。でも「売れるから楽しい」でもあると思う。お客さんと共有できるので。でも、「お金を関係なく、本当にやりたいことって何だろう?」と考えた時に浮かぶのは「やりたいこと」だと思うし、それを追求していかないと。そこは常に考えています。
それを支えてくれるのが、平子さんの「好きなことしていていいよ」みたいな姿勢。そういう感覚で作家を見てもらえると、いくらでも挑戦できるじゃないですか。その安心を得るために量産という軸も必要だと思います。

作り続けるために、食べていかなきゃいけないし。食べていくためには作り続けなくちゃいけない。

村上 : 本当にやりたいことをやり続けるためにですね。言ってしまえば、たまたま自分はお金をもらうのがやきもので、それが楽しくて、その方がよそで働きに出てお金を稼ぐよりは苦じゃないから食器を作っているだけ。笑

若くしてやきものに出合って続けられているのは、好きの気持ちがずっと変わらないからで。すごくラッキーですよね。

村上 : そうですよねー。

宗介 : 飽きないことを見つけるって、本当に難しいこと。

村上 : でも、嫌ですけどね。仕事は。

そうなんですか? 笑

村上 : やりたいことはあるんだけど、体を動かすのに限界はあるじゃないですか。ギリギリまで追い込まれないとやらないタイプなので、毎回、個展前にひいひい言って、睡眠時間を削ってやっとできるみたいな。それまでダラダラしているのに。笑

ダラダラしている時間はありつつ、追い込まれる。笑

村上 : そうですね。僕は、アシスタントがいないと仕事しないので。

宗介 : アシスタントさんの存在は重要ですね。笑

【村上雄一 × PRODUCTS STORE
たっぷりな座談会】
03

目的地に向かったのに、道が逸れた話の方が覚えてる

村上さんのアイデンティティを感じるのは、出身地である東京ですか。

村上 : やっぱりそこが大きくなるんじゃないですかね。でも、沖縄で始めたという軸はある。僕は、常に大きな渦の中にいて、自分の立ち位置を俯瞰して見られているのが大事なんじゃないかな。そうじゃないと流されちゃうんで。自分がいまどこで、何をしていて、何を作りたいのか。

「自分がどこにいるのか」を俯瞰してチェックされることはよくあるんですね。

村上 : はい、興味の赴くままに。中国が一番刺激的で、向こうに行くと自分を見つめる良い機会になります。向こうの作家さんはすごいですよ。そこに肩を並べて戦えるようなレベルまでやっていかなきゃ。やっと今40前にして、そこまでいったかなって気がしていますね。

ちなみに、お客様やファンの方の反応は気になる方ですか?

村上 : 展示会でエネルギーをもらっていますね。僕は、まだ影響力がそこまでなので、アンチがいないんですよ。アンチがいるのは飛び抜けちゃった人だから。アンチが出ない程度でちょうどいい。笑

応援してくださる方の「こういうものがほしい」という声は、ものづくりには反映されますか?

村上 : むっちゃ大事ですね。今回の茶器は「季の雲」の奥さんが、「お茶を淹れたらおいしかったけど、小さいのばっかり。大きいのも作ってよ!」って声から生まれた。

宗介 : 柔軟。笑

村上 : そういう言葉で、やりたいことの後押しをしてくれたりしますね。たくさんやりたいことあって迷う中で、求められているものがあったら先にそっちから取り掛かります。

そういった声は、商社からフィードバックするんですか?

宗介 : それが本来の我々の役割だと思うんですけど、産地を見渡してもそういう機能が足りていないと思う。メーカーさんに「新しいものないか?」と聞いちゃうみたいな。自分たちが何を作りたいか、売りたいかというスタンスが大事なのに、ものづくりに具体的な発言ができる所は少ない。
僕らの立ち位置でしか得られない情報もあるので、それをどうフィードバックするかはすごく責任がある。良いことも悪いこともちゃんと編集して。それをちゃんと作り手さんたちの力に変えてもらえるといいな。

それは、より信頼関係が求められますね。

村上 : ですね。PRODUCTS STOREさんで初めて展示して、これからどうなっていくのか楽しみです。

宗介 : この取り組みの中で、僕らが「売る」ということも大事。

村上 : 期待してますっ!

宗介 : 我が家の食器を全部買い替えるくらいの気合で。笑

器やものづくりに関することだけじゃなく、興味関心のあること、いまこれを大事にして生きていることはありますか?

村上 : 山は、妻がすごすぎて……僕が引いているくらい。このあいだ燕岳に登ったときも富士山や南アルプス、槍ヶ岳が見えて、仙丈ケ岳とか今まで登った山まで見えてくると制覇したような気持ちになるらしく。「あそこ登った、ここ登った」ってつながるのがめっちゃ楽しいみたいですよ。でも、僕は全然分からないです。笑

村上さんはどういうモチベーションで登られてるんですか?

村上 : あの、連れて行かれる。笑

そうなんですね。笑

村上 : 僕は、以前歩きの旅をしていた時も、目的地があるよりもずーっと寄り道していたので。登頂するなら時間配分やスケジュールをびっちり組まなきゃいけないから、ちょっと寄り道したら「何してんの?」となる。

ちょっと変わった花が咲いている、とかの寄り道を。

村上 : 僕はどちらかというと、そっちの方が好き。でも、自分では絶対に行かないような所に連れて行ってもらえるのは楽しいので。文句言いながら楽しんでいます。

寄り道をしながら、いろいろな側面を楽しめる性格は、幼い頃からですか?

村上 : そうですね、うちの家系がそう。でも今の時代、美術館でも予約が必要じゃないですか。だからもう、やっぱりこういう人種はつらい時代には突入していますよね。

宗介 :

村上 : 東京行く前にも、ちゃんと美術館を予約しましたよ。何とかこの世界で生きていけるようにがんばっています。笑 本当はハイエースとかで、行き当たりばったりで寝て、みたいなのが楽しいんだろうなと思いつつ。

宗介 : 生きる力は村上さんのようなタイプの方が強いと思いますけどね。いきなり美術館が休みだったとしても「何しようか」とすぐ動ける。予定が崩れるとボロボロになる人もいますもんね。

事前情報を入れておかないと楽しめない人もいます。全く逆ですね。

村上 : そうですね。結局、そういうのって覚えていないですよ。目的地に向かったはずなのに道が逸れた話の方が覚えている。そういうのは生きている感じがしますよ。笑

なるほど、それは同感です。

村上 : そういう意味でも、Danceは偶発的にできた作品だと思います。目的地に向かってというより、突然「こんなの面白いんじゃない?」って寄り道からできたものなので、これも楽しんでもらえたら。

ほかにも、最近気になっていることはありますか。

村上 : 最近は、あいみょん。顔も好きだし声も好き。あいみょんは演歌だと思ってる。ノスタルジーな感じもあって、色っぽい意味も隠されていたりする歌詞のバランスとかも良い。今年の初夢に出てきたんですよ。それで気になっちゃって。笑

え、初夢がきっかけですか?

村上 : その前から気になっていたから出てきたとは思うんですけど。今ではあいみょんのファンクラブに入っちゃって。武道館のライブに行きたい~

作家さんがどういう音楽を聞くのか気になっていたのでうれしいです。

宗介 : 作り手さんって音楽好きな人が多いですよね。リズム感って大事なのかなって。

村上 : 美術や芸術すべてに音楽はつながっていますよね。

10代のときに渋谷でファッションに触れながら遊んでいらしたなら、音楽も結び付いていましたよね。

村上 : はい。歩きの旅のときも、ギタレレなら持てるかなと思って、買って弾きながら歩いたりして。でも「邪魔!こんなんで曲作ったりしねーわ」って。笑 歩いているとリュックの重さが全てなので、邪魔でした。

何でも続くわけじゃないんですね。笑

村上 : そうですよね。笑

【村上雄一 × PRODUCTS STORE
たっぷりな座談会】
04

あの人から見た、陶芸家・村上雄一

元勤務先の先輩(職業小平健一)・小平健一

現場の生産管理を任せてた時、意見が合わないときは泣きます。
自分はこうしたらイイ。確固たる思いがあったからです。
一回だけでしたけどね。

アイデアマン
作品に対して
仕事場、工房に関して
地域、みんなでやることに対して。

昔、僕は土岐口に住んでいて、ゆーいちは下石に住んでいて、
二人で歩いて中間地点の焼き肉屋によく行きました。水曜日は生が半額。
そこはおばあちゃんがおしゃべり好きで、僕ら二人で話したいことが
あったはずですが、だいたいゆーいちが優しいから、ヘーそうなんですかって
聞いてあげちゃうから、おばちゃんに乗っ取られる感じでふたりの
たいした話もせず、キムチとコチュジャンを買って帰ったものでした。

ゆーいちの工房は、 改善、アイデアのかたまりです。
僕が好きなのは、照明です。仕組みはよく分かりませんが、
上げたり下げたりが自由に調整できます。
そういうとこ褒められると嬉しそうです。

ゆーいちの下石愛は見上げたものです。
毎年10月に「どえらええ陶器祭り」という下石の窯焼きがやっているお祭りに、
昔在籍した小兵の社長に頼まれて、地元作家ブースとりまとめをしてきました。
本人はもうその時点で売れっ子作家で忙しかったのに、意匠研卒業したての若い子から
一回り上の有名作家のおじさんたちを束ねて、テン張りから、打ち上げの設営までを
取り仕切っていました。

だいたい作り手って、みんなでなんか一緒にやったり、連絡調整とか苦手なはずですが、
ゆーいちは当日もカメラをもってみんなのテントを周って声を掛け、終始ニコニコ楽しそうでした。

雨晴 主人・金子憲一

雨晴/AMAHARE https://www.amahare.jp/

遡ること10年前。

「素晴らしい作家が土岐にいるんです!」

嬉しそうに話す平子さんが連れて行ってくださったのが
小高い丘のうえにある村上雄一さんの工房でした。

黄色いサンテナの中に重ねて置いてあった磁器のうつわに目がとまり
村上さんに尋ねると

「古伊万里を意識して磁器でもあたたかみのある質感を目指して制作しているんです」
とこれまた嬉しそうに村上さんが教えてくださいました。

うつわ探しは人探し。

平子さんが繋いでくださった村上さんとのご縁は今も続き、
つい先日雨晴でも村上さんの展覧会を開催いたしました。

その村上さんが満を辞して平子さんのお店で展覧会を開催されると伺いなんだか
私も嬉しくなってしまいます。

日々産地のことを考えながら活動されている平子さんと
作家でありながら産地との関係性を大切にしている村上さん。

そんな素敵なお二人がタッグを組んで陶磁器産地である多治見にある
プロダクツストアで開催する展覧会はきっと大成功に違いありません。

どこでもドアがあれば飛んで駆け付けたい!