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PRODUCTS STORY

丸朝製陶所 × PRODUCTS STORE × ben
たっぷりな座談会

01 僕の力ではどうにもできない段階の、廃棄されるはずだった器
02 異業種で生まれた「共鳴」の先にあったもの
03 数字や情報で表せられないことが、憧れに変わる
04 他の産地から見た、yeild

<今回の参加者>
丸朝製陶所 代表取締役 松原圭士郎
ben 小森欣也
株式会社ユープロダクツ 代表取締役 平子宗介
PRODUCTS STORE店長 長山晶子
インタビュアー・編集者 笹田理恵


多治見市・丸朝製陶所の工場見学で出迎えられたのは廃棄される器の山。鉄粉や焼けムラ、色がブレた器の表情を「個性」として楽しむ「yield(イールド)」。この取り組みは、陶磁器産地で働き暮らすメーカー・丸朝製陶所、PRODUCTS STOREの本社である産地商社・ユープロダクツ、消費者でもある多治見の飲食店・benの3組が出会ったことで始まりました。


丸朝製陶所で廃棄される商品は、誰かの物差しで決めた規格外のものたち。それを決めているのは、いったい誰なのか。それは、誰のために決めているのか。もしかしたら、私たち自身の消費行動こそが、それらの基準を生み出している可能性もあります。

正しさを押し付けたいわけではないと口にするメンバー。彼らの中にあるのは陶磁器産業のいろいろな側面を知ってほしいという思い。そして、視野を広げて、自分のものさしを見つけてほしいという前向きな希望です。これは陶磁器だけではなく、他の産物や私たちの生き方にも当てはまることだと思います。

10月15日(土)からPRODUCTS STOREで開催する「yield展」を前に、丸朝製陶所で座談会を開催。yieldを始めてからの変化、そして元バイヤーで現PRODUCTS STORE店長・長山の視点。それぞれが多治見の街で生活しながら、いま感じていることや未来への思いを語り尽くしました。

【丸朝製陶所 × PRODUCTS STORE × ben
たっぷりな座談会】
01

僕の力ではどうにもできない段階の、廃棄されるはずだった器

このyieldの取り組みでは、メーカーの商品でも生まれてしまう個体差を「個性」として楽しみつつも、その基準に対しての疑問も抱えています。展示で掲示するメッセージにも「基準は誰のためのもの?」とありますが、一つは「売り場でクレームを出さないため」という側面があると感じます。その点は、前職がバイヤーであり売り場を統括していた長山さんから見ていかがですか?

PRODUCTS STORE 長山晶子(以下、長山) : まず、不良とされる器は、商社やメーカーで「これはダメ」という基準があって止めてくれるから小売店にはおりてこない。これは陶器に限らず布ものも同じ。それらを省いた上で仕入れさせてもらっていました。私が美濃に来て、こんなにたくさんの不良品があったのかとすごく驚きました。バイヤーでこの現状を知っている人は多くないと思います。

ユープロダクツ 平子 宗介(以下、平子) : スタッフが商品について質問されても説明できる範囲でやろうと思うと、やっぱりレギュレーションが必要。個体差を説明しきれるだけの教育ができればいいけれど実務的に難しいので必要な基準だと思う。ただ、そのやり方に反省がないわけでもないので、それがyieldの取り組みにつながっていると思います。

飲食店のbenが、捨てられずに取ってあった廃棄予定の器を見て、「これ、いいじゃん」と見つけたことでyieldの構想が生まれました。最初の印象はどうでしたか?

長山 : 正直、店では売れないと思いました。前職で想像すると、お客様にスタッフが説明できないだろうなって。傷のない商品とyieldのような鉄粉や色ムラなど「個性のある器」が並んでいる店で、「1点は色ムラがあります」とお伝えしても納得してくれるお客様は少ないんじゃないかって。

平子 : 不良品は値段を下げて売るのが一般的なのに、ましてやyieldは同価格で販売する。

昨年10月と今年6月に開催したyield展。店頭でお客様の反応を見て、いかがでしたか?

長山 : びっくりしたのは、器の個性を面白いと思って買ってくれる人がいること。どうしても小売りの世界にいると「B品」は安く叩き売るという固定概念があったけれど、そうじゃないとyieldを通じて知れた。私自身にとっても新しい発見でした。

ben 小森欣也(以下、欣也) : もちろんメーカーとして良品を作り、商社が良品を紹介することに使命はあるのかもしれないけれど、消費者の立場からすると、特に僕は自分で選びたいんだよね。自分で気に入ったものを探したいから。ましてや、みんなが持っているものが欲しいわけじゃない。メーカーや商社は、そういう消費者に向けての提案があったら、きっと新しい売り方になるんじゃないかな。

平子 : 既存の流通の手法が悪いわけではなく、我々の業界を支えてきたと思う。でも、僕らも直営店を始めたからこそ、自分たちの場所でyieldのような取り組みができた。そのチャレンジの結果、選択肢と可能性が増えた。それはすごくいい経験だし、yieldを通じて丸朝さんとも新しい関係性を作っていければ商社のブランディングとしてはすごく理にかなっていると思う。

作り手である丸朝製陶所からは、いま話していたような「個性のある器」が出来てしまうことに対して日々どう感じていますか?

丸朝製陶所 松原圭士郎(以下、圭士郎) : 頑張っても頑張っても正解が見えない。何十年やっていても今でも失敗ばかりで、この間も3,000個もダメにしちゃった。10回ぐらいやり直して、なんとかサンプルはうまくいったけれど原因が分からない。

平子 : やきものは自然を相手にしているからこそ奥が深い。

圭士郎 : 誰のせいにもできないし。土は天然だし、分業だから全てをうちで担っているわけじゃない。人のせいにするわけにはいかないもどかしさはあるけれど、それはみんな一緒。その中でどういいものを作っていくかというところに楽しさがあるのかもしれないね。

平子 : 商社の視点で言うと「天然の原料だからしょうがない」と開き直るメーカーさんも多い。圭士郎さんはそこをさらに掘り下げて探求できる人。

長山 : 土のせい、釉薬屋さんのせいとメーカーさんに言われると何もできなくなる。

平子 : メーカーによって判断が違う。自然のものだからどうしようもない要素もあるけれど、努力で改善できる部分があるはず。圭士郎さんがおっしゃるみたいに終わりのない戦いだから根気がいりますよね。

圭士郎 : そう、どこまでやり続けられるか。「土が悪いから、やめた」って言ったらそれで終わっちゃう。でも、その価値観は人それぞれだよね。

平子 : 1歩踏み込んだことがノウハウになるし、別のものづくりにも生きていく。だからこそ今の丸朝があるんだろうな、と商社である僕らの立場からはよく分かる。

yieldでは自然のものだからこそ生まれる個体差の提案、価値の見直しの機会を生み出しています。どうにか良品を作ろうと努力しきった先で生まれた「個性品」と捉えていいですか?

圭士郎 : 直したい気持ちは山ほどあって、原料から変えたり、窯の雰囲気を変えたり、いろいろやってきた。その先の結果がyield。やりきっているからyieldとして提案できる。やりきってなかったら緋色や色ムラなどの不良が出ないようにもっと工夫していたはず。僕の力ではどうにもできない段階の、廃棄されるはずだったものがyieldになった。

 

【丸朝製陶所 × PRODUCTS STORE × ben
たっぷりな座談会】
02

異業種で生まれた「共鳴」の先にあったもの

yieldを通じて、メーカーと商社、消費者である飲食店が対話する機会が多かったはずです。業種が違っていても共感できたのはなぜでしょうか?

欣也 : 僕は yieldで共感を飛び越して共鳴していると思っていて。共感だけで終わっていたら半歩も前に進めないけれど、共鳴することによって「なら、やってみるか」と動いてくれている。他業種同士でもこういうことができるのは、この先大事になってくるんじゃないかな。

立場や価値観は違うけれど、響き合うところがあるんですね。

欣也 : 琴線に触れるようなところを触ってるだけなんやけど、それが傍から見るとちゃんと共鳴している。それがすごく大事な気がする。

それは、yieldの器を手に取る人にとってもってことですよね?

欣也 : そうそう。

圭士郎 : 僕も、長山さんが言ったみたいに最初は「絶対買わんだろうな」と思い込んでいた。でもyieldとして店に並び、普通の食器として、製品として選んでいるという現実を目の前にした時に、やっぱり常識にとらわれないことと、「変化」が大事なんだと感じた。商品の伝え方だけで一般の人に届けられる可能性は広がっている。yieldをやったから、まだまだやきものに可能性があると分かった。僕一人では、その領域は一生超えられなかったと思う。

当初は「売れない」という固定概念があったのに、なぜyieldに賛同してくれたんですか?

圭士郎 : ただ単に面白そうだったから。笑  やったことないことをやるのは好きだし、身近な地元の人が、手伝って応援してくれて、やろうよと言われれば断る理由はない。新しいことはやってみないと分かんないじゃないですか。

yieldを通じて、やきものへの見方が変わったり、丸朝製陶所に関心を持つ人も増えてほしいですね。同業の方からの反応はありましたか?

圭士郎 : みんな意外と同業が何をやっているか知らない。後発でもいいから丸朝が新しいことをやっていたと産地で広がるといいな。カッコよく言うと業界をざわつかせたいね。笑

平子 : 業界としては作り手が減っている状況だからこそ刺激になればいい。

欣也 : 飲食店は淘汰されて当たり前の世界で、新しい血が入って、どんどん街が面白くなっていく。でも、陶器の業界は新規参入がない。

圭士郎 : 実際、僕が業界に入ってから新しい窯元は1軒もできていないと思う。今後も窯元やメーカーが増えていくことは絶対にない。やろうとしている人はいるはずだけど、絶対にみんなが止めていると思う。

長山 : やるとしたら作家さんの方がいいんじゃない?って。

圭士郎 : そう。

平子 : 圭士郎さんみたいな「できる跡継ぎ」がいないと廃業しか選択肢がない。でも、そんな奇跡はなかなか起こらない。業界の人の中には継ぐべくして継いだ人が多いけれど、やきものが好きじゃないんだろうなという人も多い。

圭士郎 : そういう人は、みんな辞めていった。同業他社が何社も辞めたからうちが続けられているという甘い部分もあるんですけど……仲間としては続けてほしかったですよね。

欣也 : 飲食で僕がすごく痛感するのは、やっている我々側が「憧れられる存在」じゃなくなってきている。そこは業界が違っても似ているはず。時代が変わるのはしょうがないし、そこに合わせるつもりもないけど、どちらかというと時代に取り残されている側だと思う。

圭士郎 : この事業を始めると本当に苦労するし、大変さが想像以上に自分に降りかかってくるから新しく始めたい人には「やめときゃあ」と言ってしまう。そんな簡単じゃないよって。

欣也 : 仕事に憧れるってことは覚悟がないとダメだと思う。その覚悟が少ないのがやっている側から見えちゃうと「やめとけ」って言っちゃう。話せば覚悟があるのかどうかはなんとなく分かるし。こちら側もいい面も悪い面も含めて伝えていかないといけない。

業界の厳しさを感じながらも、続けられているのは覚悟があるからですか?

欣也 : 諦めが悪いんだと思う。諦めるのは簡単だから、そんな簡単に諦めてたまるかという思いが根底にある。遠い未来よりも目の前で起きることに対処できない悔しさが先に来る。毎日「こうやればよかったかな」「こうやったらどうか」がもう何十年と続いている。

 

【丸朝製陶所 × PRODUCTS STORE × ben
たっぷりな座談会】
03

数字や情報で表せられないことが、憧れに変わる

平子 : いま、ものすごくありがたいのは長山さんが営業先に産地の特性を説明して、バイヤーに理解を促し、窯元やメーカーさんがやりやすいように段取りしてくれること。両方の立場を知っているからできることで、その動きは新しいと思いますね。

長山 : 店に立つスタッフさんが「怒られたらどうしよう」「何か言われたら困る」と構えてしまうから、それなりに基準を決めてあげないとスタッフが混乱するのはあります。特に作家ものだと「情緒がある」とお客様にお伝えすれば納得してくれるんですが、窯元やメーカーの量産ものだとまだ理解されにくいことも多い。

圭士郎 : いまはメーカーも作家も境がないじゃないですか。作家さんも型を使うし、手が込んだものを作っているメーカーもある。そこって何が違うの?

平子 : 扱う店、扱う人のリテラシーの違いじゃないですか。作家ものは値段が高いし、ものを扱うためには商品背景の説明が必要なので、そこの違いは大きい。

圭士郎 : いまは一言で作家もの、メーカーものと分けられない商品になっていますよね。やきものってそこが難しいし、今後どうなっていくのかすごく気になる。器が好きな人は目当ての作家さんがいるけれど、一般消費者は意外とそこで判断していない。売る側が初めからカテゴライズして、「これは作家ものだから1万円です」と金額も決めるから消費者はそこの沼に入るしかない。作家だから、メーカーだからではなく、もっと買ってもらう人に判断を委ねた方がいいものは残っていくと思う。

欣也 : 圧倒的に消費者の方が情報を持っていると思う。ライフスタイルって、自分で見つけなければライフスタイルじゃない。そんなもん提案されたところで、人が決めたライフスタイルであって自分のライフスタイルじゃないから。

圭士郎 : それに、やきものに対して業界側の姿勢がグレーすぎる。みんな言わずに隠すから。買う人に対して正しい情報が伝わっていない。だから業界がどんどんダメになっていく。

平子 : 僕はあまりピンと来ないですね。調べれば分かる時代だからオープンになってきているのかなって。

圭士郎 : 例えば、中国製なのに転写を貼っただけで「メイドインジャパン」の器になる。ルールや法律はクリアだけど一般の人は知らないから判断できない。肉でもそうでしょう?食と一緒なんですよ。

欣也 : 食べ物もそう。国産和牛の子牛の多くは沖縄で生産されている。銘柄をつけるためには、一定期間だけある地方で育てればいいだけ。生まれは国内のどこでもいい。

圭士郎 : 僕はもっと情報開示しないといけないと思う。

欣也 : 圭士郎さんが言っていることもよく分かる。少し前に問題になったのがアサリの産地偽装問題。中国でアサリを大量に買って、自分の浜でばらまいて育てて、国産アサリとして販売する。もちろんそんなことはない方がいい。でも国内で採れなくなっている現状もある。

海外で作られた器も転写すれば日本製になることは知らなかったです。業界では常識ですか?

圭士郎 : 常識ですよ。以前、「買う人に誤解を招く環境を作っていることをどう思うのか」とある営業担当に聞いたの。そしたら「法律に沿ってやっているので」って。小売店からも「売れなくなるからメイドインジャパンをつけて」と言われるらしい。でも「そんなことをしている会社にうちの商品は売れません」と言えない自分がいるから、まだまだ僕もダメだなと思う。それが言えるような会社を作りたい。

benはお客様も仕入れ先に対しても、媚びるようなことは一切ないですよね

欣也 : 媚びない。

圭士郎 : 僕もそうなりたい。

欣也 : 地方で小さい飲食店が生き残ってくためには、媚びたりつるんだり、仲良くした方が絶対にやりやすい。でも、誰かに媚びなくても強い店って地方でもあるんだよってことが憧れにつながっていくと思ってる。だから、それを貫き通しているだけ。

「飲食業は憧れられる仕事じゃなくなっている」と話していましたが、そこも諦めてない?

欣也 : 諦めてない。よく「どうやって作るんですか?」って言われるけど、僕は全部1から10までレシピを教えているし。でも、絶対にできない自信がある。できるもんならやってみろって。やっぱり1回聞いて作っただけで同じものは絶対できないから。圭士郎さんが何十年と失敗してきたことが「今」であるように、僕も何十年とやって失敗したことが今のレシピと味になっている。それは数字や文字には絶対に変えられない。圭士郎さんも「窯の雰囲気」って言ったけど数字では出せないでしょう?

圭士郎 : 出せないね。

欣也 : そこを憧れてほしいっていうのはすごくある。

情報やマニュアルで手軽に得られるものでもない。奪いたくても奪えないものですね。

欣也 : そう。飲食も技術革新で9割まで工場で作った食材を送る、という業態がある。あとは自分の店でオープンなり、フライパンで焼くだけでホテルと同じ味が……みたいな。圭士郎さんが言っている「グレーすぎる」のと同じで、それを使うお店は多いはず。ただ、飲食店は食べ物だけの評価じゃない。店の雰囲気、調度品、サービス、全てがあっての満足だから、そこの違いはあるけれど。

平子 : 欣也さんみたいな哲学を持っている飲食店があれだけの支持を得ている。そういうやり方が受け入れられるのがかっこいい。やっている仕事は全然違うけれど、チャレンジとしてものすごく勇気づけられますね。

そういう観点では物を扱う業界の難しさを感じます。丸朝さんがこんなに素晴らしい理念を持ってやっていることは、器を見ただけでは伝わりにくいじゃないですか。

平子 : これからは丸朝さんみたいな会社しか残れない時代になるんじゃないかと思う。社会に必要とされていないとやっている意味はない。「中国製をメイドインジャパンに」は金儲けのためだけの発想なんですよね。そういう発想に未来があるのか。これだけ情報が入る時代になったら、いつかその嘘はつけなくなって、いかに正直にやれるかという姿勢が長い目で見ると生存競争に勝っていく方法じゃないかと思う。

欣也 : そうだね。

平子 : ただyieldにおいては、丸朝さんに売上で大きなメリットが生まれていないことは課題。それでもここまで取り組んでくれていることが圭士郎さんの変態なところだし。

圭士郎 : 変態。笑

平子 : その変態の熱量が実現させていること。それはbenさんにおいても同じだけど、そういうことに時間を使えるのは面白いと思う。もしかしたらこの新しい視点が未来を作る足がかりになるんじゃないかという期待は持っています。

圭士郎 : すごい市場性を生むかもしれないですよ、このアクションが。

欣也 : 個人的には絶対、yieldは海外の方が受けると思う。

圭士郎 : そう思う、ヨーロッパとか。めっちゃ面白いじゃないですか。

今回の展示はポップアップとしての展開も見越して企画していますが、売り場を作る長山さんとしてはどうですか?

長山 : 初回は売れるかどうかの不安の方が大きかった。ようやく自信につながって、お客様に伝えていけるところまで持ってこられたのは良い結果だと思う。今回の展示を経て、取引先に発信することで、ちょっとずつ「やってみたい」と思ってくれるところがあればステップアップできるかなと。その可能性はyieldにあると感じますね。

この取り組みは永遠ではなく、「個性品」とされるyieldの商品が生まれなくなる未来を目指しています。そのためには消費者の価値観やものの基準が変わる必要もあります。

欣也 : これが東京や大阪でポップアップできた時に期待するのは、バイヤーさんや店舗スタッフさんたちが「丸朝の工場を見に行きたい」と思ってもらえること。それは消費者にとってプラスなんじゃないかな。

平子 : その中から「丸朝さんで働きたい」という人も現れたら。そんな循環があったら最高ですよね。

欣也 : 当事者だからこそ口に出せないことも、バイヤーや消費者など他の人が本当のことを知るきっかけがあって底上げができると言いやすい環境になっていくはず。

平子 : あとは哲学が足らないんだと思いますね。自分の仕事としてやりがいを感じられるかどうか。そこは業界としてすごく課題だと思います。

欣也 : メーカーや商者、飲食店も含めてやっぱりかっこよくないと、みんな目指してくれないから。ちょっと痩せ我慢してでもかっこよくいてほしい。

圭士郎 : やっている以上は、かっこいいって言われたいですね。yieldもそうなのかな。この広い産地でも誰もやっていないじゃないですか。

平子 : 僕らの業界は、今を生きる視点しか持っていなかったと思う。生産背景や原料のこともだけど、今が何とかなればいいと続けてきた結果、本当にどうにもならなくなってきている状況なので。今からでも未来を作っていく方向に少しでもシフトしていくべき。

長山 : 小売店も同じでした。いま売れるものばかりを並べて売り上げを立てているので、翌年に前年比で苦しむし、バイヤーは常にヒット商品を探し続けないといけない。バイヤー向けの企画で「実はyieldという取り組みがあって……」と提案できると面白いと思う。それぐらいのことになれるよう、私たちが発信していかないといけない。

平子 : 展示が終わったら、さっそく台湾のお客さんにプレゼンを。現地に行った方がいいのかな?笑

圭士郎 : 楽しいな~。

欣也 : 海外に向けて、ただ単に日本のプロダクトを紹介するだけじゃないマーケットの展開は新しいかもしれんね。

まだまだ話が尽きないですが、今回はこれくらいで。ありがとうございました。

圭士郎 : 次は、お酒を飲みながらですね。

鉄粉や焼けムラ、色の揺らぎが「個性」にしか見えず、それを楽しみたい衝動こそが丸朝製陶所×yieldの原点です。

どれだけ気を付けて作っても、全体の1割はどうしても「不良」が出てしまうもの。

本当はそこに葛藤を抱えていた作り手側、産地が抱えてきた基準について疑問を持たなかった売り手側、そして世に出回らない「個性品」に対して魅力を感じた消費者側がいっしょになってyieldを生み出すことに意味がある。

yieldの展示から何かを感じ、自分の価値観に触れてみてください。

【丸朝製陶所 × PRODUCTS STORE × ben
たっぷりな座談会】
04

他の産地から見た、yeild

『オレたちの兄貴』こと有田の雄、KIHARAの松本社長

https://e-kihara.co.jp/

まずは、率直な感想としては、素晴らしい活動されているなと感激しました。
私も皆さんと近い世代なので、共感することばかりです。

我々の産地でもそうですが、これまでの常識にそぐわない商慣習が出てきています。
これは、時代の変化と共に常に何かしら伴うことであるので、特別な事だとは思っていませんし、その問題を解決しなくてはならない風潮も必ず起こってきます。
恐らく、そちらの産地内でも二級品問題は、数ある問題の中の一つに過ぎないと思います。
問題視する風潮の根本は「産地の未来のこと」「次の世代へ承継」に対する強い思いだと思います。
問題解決の為に考えること、行動することが「伝統」を守ることに繋がると思いますので、私も大事にしているところです。

平子さんのプロジェクトのように、我々の産地でも何か行動を起こすと、誰か共感してくれます。その共感した人が同じプロジェクトに参加する場合もありますし、本質は同じで別の切り口で別のプロジェクトを立ち上げることもあります。

弊社が立ち上げたプロジェクトを、他社さんも参考にされるケースが多々ありますが、逆に弊社が参考にする時もあります。
私はそれでいいと思っていて、我々の産地は、個性の強い小規模事業者の集団で形成されているので、特にビジネスが絡むプロジェクトは、単独でないと長続きしません。
なので、数多くのプロジェクトが頻繁に立ち上がった方が、結果、産地にとってプラスになっていますし、情報発信もその方が効果的です。

二級品については、我々の産地でも問題視されていますが、「割引せず定価で売る」取組みは私には無かった発想です。ターゲットや見せ方を変えれば通用することを実証されたことは、とても素晴らしいことだと思います。恐らく新しいアイデアがドンドン出てきていると思いますので、今後のご活躍を楽しみにしています。

いい刺激を受けました、ありがとうございました。

三重の一番星、ラグビーで鍛えた突破力で産地を引っ張る
山口陶器の山口社長

https://yamaguchi-p.jp/
10/29-30には山口さんが立ち上げたイベント『こもガク』が開催されます!

まず新しい取り組みにチャレンジされていることに深く感動しました。
私たち窯元にとっても、地球環境にとっても素晴らしい事業展開だと思います。
そしてこのように異業種間で切磋琢磨しながら生産者の意識や視点を変えていくことは、
業界全体を進化させ、 底上げしていくことへつながっていくはずです。
これからの活躍、楽しみにしております。