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PRODUCTS STORY

タネヲマク × PRODUCTS STORE たっぷりな座談会

01 ひょんなことから物件が手に入り、インド雑貨の店を始める
02 タネヲマクのカレーが、毎日食べたくなる理由
03 何もイメージせず、成り行きまかせで「なんとかなる」
04 タネヲマクが、多治見に移転してから生まれたつながり
05 NEU!との往復書簡

<今回の参加者>
タネヲマク 増田 若菜
株式会社ユープロダクツ 代表取締役 平子 宗介
PRODUCTS STORE 店長 長山 晶子
インタビュアー・編集者 笹田 理恵
撮影 加藤 美岬

<場所>
タネヲマク(岐阜県多治見市小路町3)


2025年10月でPRODUCTS STOREは5周年を迎えます。1周年では「私たちが支えられている多治見の店を巡り、つながりを感じてほしい」という思いから「PRODUCTS STOREが多治見をひかえめにジャックする2日間」と掲げてコラボイベントを行いました。

PRODUCTS STORE 1周年イベントレポート
https://news.products-store.jp/products-story/1st-event-report/

5周年を迎えるにあたって、まちの皆さんをより知ってもらうべく1周年の参加店と座談会を行いました。6店舗目は、南インドの定食「ミールス」が食べられる「タネヲマク」です。お話を伺ったのは、「ワカナさん」こと増田若菜さん。
生まれ育った岐阜県瑞浪市で、ひょんなことからインド雑貨とチャイの店を始めたワカナさん。酵素玄米と味噌汁のワンコイン定食も始め、南インド料理に心酔し、ミールスを提供する店へと変化していきます。
そして、2021年に多治見に移転。間違いなく、まちのカレーの偏差値をぐっと上げた存在です。「成り行き任せで、いまに辿り着いた」と話す好奇心が旺盛なワカナさんのヒストリーから、毎日食べたくなる南インドカレーの魅力、人見知りなワカナさんから見る多治見のまちの包容力など……笑いが絶えない座談会となりました。読んだら、きっとタネヲマクのカレーが食べたくなるはずです。

【タネヲマク × PRODUCTS STORE たっぷりな座談会】
01

ひょんなことから物件が手に入り、インド雑貨の店を始める

まずは遡ってタネヲマクができるまでのストーリーをお聞きしたいです。岐阜県瑞浪市で始めた店は、最初はカレー屋さんではなかったんですよね?

増田 : そう、味噌汁と酵素玄米を出すお店でした。

平子 : カレーに辿り着くまでが気になる !

増田 : 瑞浪の店は、母の実家の物件だったんです。そこでは10年間くらいチャイとカレーのお店が営業していて、私もよく食べに行っていました。その方が実家のある名古屋に引っ越すことを機に物件が空いて、そこから違う人が何人かは入ったりはしたけれど、また空くということになり、「変な人が入るぐらいなら押さえとけ」みたいな流れで店をやることになりました。そこから何をやろうかなと考え始めて。

平子 : 元々、自分で店をやりたいという願望もなかったんですか?

増田 : 別に何がしたいとか考えずに生きてきました。デザイン科の短大を中退してからは、フリーターでしたし。

平子 : 大学がつまらなかったんですか?

増田 : 恥ずかしい理由なんですが……人見知りがひどすぎて友だちができなかったから。笑

長山 : そうなんですか? いまではすごく友だちが多いのに。

増田 : いまでも本質は変わっていないですよ~。当時は学費を返すつもりで、ブラウン管の部品工場で働いていました。「今日は、このパーツを2万本ね」みたいな仕事。そこは、早朝勤務と夜勤の交互が大変すぎて10カ月ほどで辞めましたね。

平子 : 意外な経歴 !

増田 : 店を始める前は、実家の婦人服店を手伝っていました。でも、自分が本当に良いと思っているわけではない商品を売るのがしんどい時期でしたね。「どうせ売るなら自分がいいと思うものを売る店の方がいいな~」とは思っていたんです。それでちょうど店を手に入れちゃったし、とりあえず物でも売るかって。

長山 : 最初は、物販のお店だったんですね。

増田 : でも、物販だけだと大変だったのでチャイを始めました。それも、その場所に10年間あった店が「チャイにおまけのカレーが付く」というチャイを主軸としたスタイルで。だから、チャイを出そうと思った。だったら売る物も、とりあえずインドに買いに行くか~みたいな発想でした。

インドには、もともと興味があったんですか?

増田 : 『TRANSIT』という雑誌に載っていたインドがめっちゃカラフルだったので、行きたい!と思って興味がありました。それが30歳前半かな。人生2回目の海外でインドに。

平子 : 別にインドで当てがあったわけでもないですよね?

増田 : 何もないです。でも、インドは物価が安いし何かしらあるでしょと思って。買い付けっぽいことをしている子に「ここへ行ったらいいよ」とざっくりとした地名だけは聞いたから、そこに行けば何とかなるかと。

長山 : 実際に行って、スムーズに買い付けできたんですか?

増田 : 何が売れるとかも考えずに行ったから自分の好きなものをいっぱい買いました。しっかり買い付けをやっている人と比べたら大した量でもないけれど、買っては送って、買っては送ってを繰り返しましたね。

【タネヲマク × PRODUCTS STORE たっぷりな座談会】
02

タネヲマクのカレーが、毎日食べたくなる理由

初めはインド雑貨とチャイの店としてスタートしたものの、なぜ酵素玄米を提供する飲食店になったんでしょうか?

増田 : うちがインドのテイストだからか、以前のお店が再開したと思って来る人がいて、「ご飯は食べられないんだ~」というお客さんがけっこういたんです。飲食の需要があると思ったけれど、そんなに人がたくさん来る場所じゃないから、その頃に自分がハマっていた酵素玄米なら日持ちするし、ちょうどいいかなと思って酵素玄米と味噌汁のワンコイン定食を始めました。

平子 : ヘルシーでいいですね。

長山 : 酵素玄米を出すお店の時から、店名はタネヲマクだったんですか?

増田 : 最初からタネヲマクでした。その時は畑もやっていたので種という文字を入れたかったのと、児童書の『種をまく人』から取りました。後付けで「スパイスも種だな~」と。

カレーにハマったのは、何がきっかけだったんですか?

増田 : 初めてインドに行った時はずっと西の方にいて、現地の食べ物は追いかけていなかったんです。チャパティというパンと豆のカレー、パパド(豆の薄焼きせんべい)とヨーグルトがついていて、知識がないからどうやって食べればいいのかも分からなかった。でも、最終日に南インド料理のお店に入ったんです。英語表記もなく「あのおじさんと同じものをちょうだい」と頼んだものがものすごくおいしかった。でも、帰る直前だったからそれ以上何も深掘りはできず、食べやすかった記憶だけが残っていました。

長山 : たまたま入ったお店で南インドのカレーに出会ったんですね。

増田 : 帰ってから、海外のAmazonで南インドの料理本を買い漁りました。南インドの料理教室も探して行って、なんとなくの答え合わせもして。

平子 : すごい探求心。

増田 : それに店も最初のうちは知り合いが来てくれたけれど、だんだん暇な時間が増えてきて、カレーのレシピ本を見ては「暇だから作るか~」みたいな感じで作って。せっかく作ったし売るか~、という流れでした。店が暇なうちに、味噌汁がカレーに変わっていった。

長山 : 時間があったからこそカレー作りができた。

増田 : そこからお店の料理が味噌汁は豆のダルになっていき、少しずつ副菜が増えて、値段がワンコインの500円から700円になっていく。店内の商品が減ったから客席を増やして、試着室も無くした。店を始めて2~3年でカレー屋にしようと決めました。

平子 : 面白い。手探りからかたちにしているのがすごい。

日本の定食から南インドの定食「ミールス」になったんですね。ワカナさんは、カレーは味噌汁みたいな存在だとよく話していますよね。

増田 : 2回目の時に南インドへ行ってから、これは毎日食べられると思った。他のカレーだと体調が良くないと重くて食べる気が起きないけれど、お腹が壊れて食欲がなくてもスルスル食べられた。だから、カレーを始めた当初は「毎日食べられる」という目標を意識していましたね。毎日来てくださいという意味も込めて。

平子 : たしかに、タネヲマクのカレーは毎日食べられるから合点がいきます。

瑞浪で始めた当時は、岐阜で南インドカレーが食べられるような店はありませんでした。ミールスという言葉も知られていない時代で、大きなチャレンジだったと思います。

増田 : そう、まだなかったんですよね。でも、カレー屋はラーメン屋みたいに絶対増えると思っていた。そうなった時にミールスなら誰もやらないんじゃないかなと思って。

平子 : その発想はNEU!のうねさんと同じマインドを感じる。カウンターを打ちたい。

増田 : うねくんとはよく「分かる~」って話しています。誰かがやるとやめようって思っちゃうんですよね。先駆者でいたい。笑

【タネヲマク × PRODUCTS STORE たっぷりな座談会】
03

何もイメージせず、成り行きまかせで「なんとかなる」

2021年に瑞浪から多治見へ移転したタネヲマク。なぜ瑞浪から移ってきたんですか?

増田 : 瑞浪は駅前でも人通りが少なくて、お客さんが誰も来ない日もあったんです。周りからも「多治見に越してこや~」とよく言われていて、移転はずっと考えていました。最初に気になった多治見の物件に問い合わせたときはタッチの差で数日前に決まってしまって。そこからしばらくして、この場所が空くという噂を聞きつけてつなげてもらったら、タイミングがバッチリでした。そこから大工さんに大改装してもらいましたね。

平子 : ワカナさんはセンスがいいし世界観がある。いざお店を作れと言われても普通の人はできない。一人で営業されているので、オーダーや提供などはセルフサービス。いつも淡々とこなしているのが本当にすごい。

増田 : 仕事の手が早いのは、工場で働いた経験が活きているんじゃないかなと思う。一日に何万本もこなさないといけなかった仕事なので。笑 隣の人と「今日は負けんぞ」みたいな感じで、いかに早く流すかという感覚がいまの仕事にも活きているかも。笑

長山 : 仕事していて楽しいと思うのは、どんな瞬間ですか?

増田 : カレーがおいしくできた時ですね。「今日、めっちゃ美味しいよ !」って気持ちになります。でも、そういう日に限ってお客さんが来ない。今日おいしいのに~って思う。笑

平子 : いつもカレーをアップデートしているからこそ。振れ幅を無くすように仕事をしていたら、そうならないと思う。ブレてもいいからもっと美味しいものを目指す姿勢は作家性が高い。

増田 : インド料理の幅が広いからこそ、もっと詳しく知りたい、上手になりたいという気持ちになっていると思います。

多治見ではまちの人とのつながりが増えたと思いますが、移転してからは思い通りの結果になっていますか?

増田 : 私は基本的に流されて生きてきているので、具体的に何もイメージしていなくて。何かいい流れがあったら「やったー !」って感じだし、ここ来ても「何とかなるしょ!」みたいな感じ。イメージ通りかどうかは分からないけれど楽しくやれています。たぶん多治見が合っているんだと思います。

平子 : 何よりも我々が多治見にタネヲマクさんがあってうれしい。タネヲマクさんは客層が幅広いですよね。

増田 : めちゃくちゃ幅広いと思います。老夫婦の方もすごく多いです。ミールスのことを分かって食べている方は半分くらいだと思うけれど、ちょっと年配の人にも、うちのカレーはスルスルと食べやすいんじゃないかなぁ。

長山 : お味噌汁ですもんね。辛くないし。

増田 : 2024年にインドへ行った時もすごくお腹を壊して、食べ物がヘビーだから何にも食べたくないと思ったけれど、南インド料理は食べられる。重さが全然違うと思った。

南インドも米が主食の地域だから、南インド料理は日本人と相性がいいんでしょうか。

増田 : それもある気がする。水分が多くて野菜も多めだし、スパイスをガンガン効かせるものでもない。ちょっと酸味がある料理が多いのも日本人は食べやすいんじゃないかな。ミールスの汁物、お惣菜、漬物みたいな構成も日本の定食っぽい。

平子 : 多治見はカレー偏差値がとても高い上に、ワカナさんはNEU!やタナカリーともすごく仲がいい。同じ地域で同業なのに連携できることが個人的には謎の一つ。周りの人にもリスペクトがあるからだとは思っていますが、何故そんなことが成り立つのかと。

増田 : 私は常に一人で営業しているから、誰かと働くのが楽しい。あと共通の話題があるのも大きい。作る側と「分かる~」って話ができるのはうれしいですよ。

平子 : ライバルという意識はあるんですか?

増田 : お店の経営としては少し意識するけれど……それで定休日をずらしたりはしています。

平子 : 皆さんの連携はすごく学びが深い。そのつながりによってレベルが底上げされていると思うんですよね。多治見は面白い店がいっぱいあるし、「カレー」というコンテンツがものすごく際立っている。

研究心と好奇心が旺盛なワカナさんですが、カレー屋さん巡りもするんですか?

増田 : 前は新しいカレー屋さんが出来たらその都度食べに行っていたけれど、増えすぎて追いつけなくなっちゃいました。もう把握しきれないくらい。

平子 : それはどういう気持ちで食べに行くんですか?単純にその店の味を楽しみに?

増田 : 楽しみ半分、リサーチ半分という感じです。

自分のカレーが一番おいしいという気持ちはありますよね?

増田 : それは思う !

長山 : かっこいい!

【タネヲマク × PRODUCTS STORE たっぷりな座談会】
04

タネヲマクが、多治見に移転してから生まれたつながり

今回の座談会企画では、多治見は人に魅力があるという話題が出てくることが多いです。いろんな人がいて、包容力があって受け入れてくれるという話も出ていますが、多治見に移転したワカナさんはどう感じていますか?

増田 : 多治見は、地元じゃない人たちがたくさんいる。陶芸作家さんもそうだし、お店をやっている人もそう。いま自分の周りは多治見生まれの人の方が少ない。外から来ている人が多いからかみんな優しいですよね。

長山 : たしかに外から来た人にとっても居心地がいいですよね。

増田 : それが包容力じゃないですかね。私はもともと一緒にイベントをやったりするメンバーや知っている人がいる前提で移転したというのはあるけれど……これが全く見ず知らずの土地だったら、もう少し引っ込んでいたかもしれない。でも、いまは本当に楽しく過ごさせてもらっています。当時は、このまま地元で孤独に死ぬかもしれないと思っていたから。笑

長山 :

平子 : もともといた人たちと新しい人たちが、ちゃんと融合しているのもいい。

増田 : 特に、まちに新しい陶芸家がどんどん増えるのが本当に面白い。そこが他の土地と違うところじゃないかな。

平子 : いまやワカナさんは、多治見で麻雀仲間もたくさんいますもんね。

人見知りがゆえに大学では友だちができなかったけれど、多治見ではいっぱい友だちができている。年齢を重ねてから、人とのつながりが広がるのは幸せなことですよね。

増田 : いつも「大学を辞めてもこんなカレー屋さんをつくれた」と言い聞かせています。ふとした瞬間に「なんでやめたんだろう、さすがにもったいなかったよな~」と思い出すんですよ。でも、あそこで辞めてなかったら、いまがないからと奮い立たせています。あの頃の私に友だちができなかったことが良かった !

先ほど「未来を決めない」という話はありましたが、この先やってみたいことはありますか? カレー以外にやりたいこととか。

増田 : 商売として別のルートはあまり考えてないんですけれど、一生この形式ではやれないかもなぁとは思っています。ミールスに付いているピックル(インドの漬物)をパックで売るようなお惣菜屋さんだったら老後でもできるかもと思って。

平子 : すごくいい! ぜひお願いします。

長く続けるためのスケールダウンも考えているんですね。

増田 : そう、もうちょっと楽に回せる方法は考えています。でも、ここがやれる間は、いままで通りかな。

平子 : これからも飲食をやり続けようとは思っているんですね。

増田 : 他にやれること、お金に変えられることが思いつかなくて。

ワカナさんは、カレーを作ることへの探求心がずっと消えていない印象です。

増田 : それはインド料理の奥深さかもしれない。どれだけやってもまだ先がある。韓国ドラマから韓国料理にハマった時にレシピ本を買ってみたけれど、全然作る気持ちにならなかったんです。なぜか興味が湧かなくて……。

平子 : 料理だったら何でもいいわけじゃないんですね。

増田 : 何でもいいわけじゃないみたいです。でも、もしかしたら自分の性格的に、どこかで急にパタっとカレーをやめるかもしれないとは思う。こんなにやったのに「もう満足」と感じる日が来たらバッタリやめてしまいそうなのはちょっと不安です。笑

平子 : 自分への正直さは、ワカナさんの魅力の源泉かもしれないですね。嘘だらけの時代ですごいことです。

平子 : ワカナさんのお父さんは陶芸家の増田豊さんで、僕はだいぶ前から接点があるんです。タネヲマクさんで豊さんの展示DMを見てお話していたら、お父さんだって言うからビックリしました。

長山 : ワカナさんは、陶芸にも興味があるんですか?

増田 : 陶芸は興味があって、陶芸作家の友だちに習いに行ったらすごく楽しくて、趣味にいいかも!と思いました。でも、いざお父さんに土を貰ったら、やる気が起きなかったんですよね。みんなでワイワイ作るのが楽しいだけかも。作るって難しい。

平子 : 僕は、普段ものづくりを近くで見ているから、自分の作ったものに満足することは絶対ない。納得いくものなんて出来上がる気がしないから陶芸はやらないと決めています。

増田 : 作ること自体は誰でもできるけれど、お金に換えるクオリティを目指すのは難しいですよね。でも、土が道具になるのはすごく面白い。お父さんが「俺が死んだら窯はお前が使うんやぞ」と言っているけれど、あんな大きい窯をどうするやって思っています。笑

長山 : でも、いつか急に思い立って始めるかもしれない。

増田 : それは本当に自分でも分からない ! あとは、老後に雀荘もやりたいですね。笑

【タネヲマク × PRODUCTS STORE たっぷりな座談会】
05

NEU!との往復書簡

店主わかなちゃんとは時を同じくしてお店を始めた同期であり数少ないインドフレンズ(インフレ)であり緊急時にスパイスを貸し借りできる貴重なご近所さんでもあります。
忘れ物、骨折、散財etc…ズッコケエピソードをかなり持ってる破天荒キャラとは裏腹にすごくバランスの良い美味しいミールスを作ります。インド料理の研究に余念がなくいつもインド行きたいって言ってます。最近はヘナで髪を染めいよいよインド人になろうとしてます。
そんなインド愛がギュンギュンに詰まったタネヲマクにぜひお越しくださいませ~