CHIC...! × PRODUCTS STORE たっぷりな座談会
<今回の参加者>
CHIC...! YOUNG CLOTHIG STORE 二橋 直之
株式会社ユープロダクツ 代表取締役 平子宗介
PRODUCTS STORE 店長 長山晶子
インタビュアー・編集者 笹田理恵
撮影 加藤美岬
<場所>
CHIC...! YOUNG CLOTHIG STORE(岐阜県多治見市本町1-91 木塚ビル1F)
2025年10月でPRODUCTS STOREは5周年を迎えます。1周年では「私たちが支えられている多治見の店を巡り、つながりを感じてほしい」という思いから「PRODUCTS STOREが多治見をひかえめにジャックする2日間」と掲げてコラボイベントを行いました。
PRODUCTS STORE 1周年イベントレポート
https://news.products-store.jp/products-story/1st-event-report/
5周年を迎えるにあたって、まちの皆さんをより知ってもらうべく1周年の参加店と座談会を行いました。2店舗目は、多治見の駅前商店街に店を構える「CHIC...! YOUNG CLOTHIG STORE」の二橋直之さんです。
幼少期から多治見で育った二橋さん。輸入車のディーラー、アパレルの販売職を経て、2020年に古着店として独立しました。PRODUCTS STOREのほぼ向かい、同時期にオープンという関わりの中での5年間を伺いました。いつも楽しそうな二橋さんが大事にしている言葉、多治見愛が溢れる理由、これからの5年で叶えたいことなど話題が尽きず……5周年パズルDMの二橋さんのモチーフともなった、大きな展望(?)まで! 気持ちが明るく前向きになれる座談会となりました。
毎日を楽しむために、ずっと大切にしてきた言葉

平子 : 二橋さんのすごいところは「多動力」。たくさん動く二橋さんを中心に人がつながっていくんだと思います。
二橋 : 逆に言うと、それしかないなって。亡き母から「あんたは人に恵まれている。それは生まれ持った才能だからうまく活かせばいい。けれど、奢ることのないように」と言われていました。僕は今年で47歳。50代が目前になると、いままでの過ごし方や人との関わり方、いろんな感覚を改めて考えさせられますね。
二橋さんは、まず神戸のメルセデス・ベンツに入社して5年ほどエンジニアと営業職を経験されました。その後、アパレルの販売職に転向し、Brooks Brothersに入って10年で独立。多治見のヒラクビルでイベント出店などを踏まえて、この店を構えたんですよね。
二橋 : そう、全部がつながっていますね。輸入車のディーラーに入った理由は、お客様に経営者や先生などが多く、トップに立っている方と関われる機会が得られるから。普段なかなかお会いできない人たちと関われるのは、自分にとって良い感覚を得られると考えました。あとは、純粋に神戸でベンツってめちゃくちゃおしゃれじゃん !って。笑
長山 : 普段、接する機会がない方と関わるきっかけだったんですね。
二橋 : その中でも、すごく人を大事にされている人、メインの仕事をやりながら好きなことを別でやっている人など、いろんな感覚の人たちに会えたことは現在につながる一つのきっかけです。関西人のマインドもすごい。ちょうど阪神・淡路大震災の数年後だったので、大変な状況の中で動いてきた人たちの言葉はすごく説得力がありました。

平子 : 多治見を離れて、新しいまちで働くことに苦労はなかったんですか?
二橋 : 苦労もしたし、良くしてくださった経営者さんたちに愚痴をこぼすこともありました。そういった時に「しんどいと思うからしんどいんや。試練やと思え。試練だったら一生続くわけじゃないし、試練をどう楽しむかと考えながら進んだらものすごい楽やぞ」と。その頃は分からなかったけれど、この20数年ずっと頭にある言葉です。「しんどいけれど、これは試練。どう楽しもう?」って。ここに来るまでにいろんな歴史がありましたが、その言葉のおかげでずっと救われてきています。
長山 : たしかに、二橋さんはいつも楽しそうです !
二橋 : 「楽しめ」という言葉は自分の中にありますね。いまでも決して順調じゃない。大変だけど、何かある度にしんどいと思わずに「これはどうやって楽しもうか?」と考える感覚は、これからも続いていくはず。50代に向かう中でも、どう楽しむかという視点で考えると楽観的でいられる。「耐える」になるとストレスになっちゃうから。
二橋さんの醸し出す「楽しい」雰囲気は、人との出会いから得られた気付きによるものだったんですね。
二橋 : 自分にも言い聞かせています。下を向いたら足元しか見えない。ちょっと角度を上げれば、いまここからの見え方も変わってくる。できるだけ下を向くんじゃなくて、先を見ていきたいですね。

誰かの「きっかけをつくる場」として多治見で古着屋を始める

二橋さんは、2020年に古着店として独立後、さまざまなスタイルの事業を展開させています。どう変化させていったんでしょうか?
二橋 : 僕自身の屋号は「N style engeneer」で、その中に「みんなのCHIC…!」という共同体があります。ライフスタイルのコンセプトストアとして「CHIC…! YOUNG CLOTHING STORE」、地域まちなか活性プロジェクトとしてお土産事業を進めています。
平子 : 現時点ではお店をやりながらも、いろんな事業を同時進行で育てている。
二橋 : コロナ禍から始まった5年間の情勢が激動で、景色も感覚も変わった。でも、僕にとっては変わっていくことは想定内。僕は皆さんに当初から「古着屋がやりたいわけじゃない」と言っていました。ただ、ここが「多治見に暮らす人たちの、暮らしにきっかけを与える場所」という軸は変わらない。何によってきっかけを与えるのかは、今後もどんどん変化すると思います。

長山 : 店舗は、一緒にお店をされているマルヤさんとの共同スペースですよね?
二橋 : ここはともに店を営むマルヤさんと古着をメインに置いています。共同の場所として2人で使うから維持費は折半だけど、それぞれに在庫を持って並べています。商品の売り上げは仕入れた人間のところに入るシステムです。ランニングコストが半分になるんだったら負担も少ないし、僕が仕入れられないものや自分の持ってない感覚は彼が持っているから相乗効果になると考えています。
平子 : 現代的な考え方ですよね。
二橋 : いまの時代は、いろんな人が集まることによって一つのコンテンツができる。全部、自分がやる必要ないですよね。
平子 : 僕らもですが、リアルに場所をつくったことの効果はものすごく大きいと思う。SNSで発信しているだけではなく、場所を持って人との会話ができるようになったことで広がった動きはあるはずです。
二橋 : そうですよね。人との関わりってめちゃくちゃ面白いじゃないですか。刺激をもらえるし、リアルに関わっているからこそ感じられる熱量もある。

年齢、性別、ジャンルの垣根なく、人が集まるハブをつくりたい

では、多治見愛が深い二橋さんの思う「多治見の魅力」とは何ですか?
二橋 : ずばり人ですよ。それだけですね。今回インタビューされる方々の魅力も人柄じゃないですか。
長山 : それは間違いないです。
二橋 : 自分さえ良ければいいのではなく、いろんな仲間と関わって面白いことをどんどんやっていきたい。その延長線上に自分たちが生活できる収入が入ればいい。だから、僕らも素直に皆さんと関わらせてもらいたいと思っています。
平子 : 僕たちも感謝しかないです !
二橋 : だからこそ、いろんな人が多治見に来てほしい。観光スポットをつくって人を集めるよりも、生活している住民や商売している人に会いに来てほしい。そうしたら「もっと楽に生きていいんだ」とか「俺もチャレンジしていい」みたいなきっかけが生まれると思うんですよね。僕は、多治見にいるクセ強な人たちを見て育ってきているから、自分もこの年齢になった時に何かできないかと思えた。引き継がれてきているんでしょうね。
平子 : 純粋に「みんなが楽しそう」というのもキーワードかと思うんですよね。
二橋 : 多治見の人たちは、良いものは良いと言う。そういう人たちと関わってほしい !

平子 : 二橋さんは、生まれも多治見ですか?
二橋 : 生まれは名古屋で、2歳で多治見市内の「ホワイトタウン」というニュータウンに引っ越してきました。若い時は都会に出て行きたかったですよ。でも、ながせ商店街には古着屋やインポートものの洋服屋、レコード屋もあった。いまは全部更地になっちゃったけど。
長山 : 昔の多治見を知る人の話題から出てくるお店ばかり。
二橋 : 当時は、学生は学生なりの楽しみ方があったんですよね。いまの若い子たちは学校から家までの間で行くところはコンビニかスタバくらいしかない。そうなると何の思い入れもないから、大学で上京して東京に就職しようと思う。いつも学校からの帰り道で寄った場所、どこかの名物おじさんとか、そういう記憶が残っていると生まれ育ったまちをいつか懐かしいと思うはず。
独立してから、すぐに多治見でお店を始めようと考えたんですか?
二橋 : 脱サラして名古屋を拠点に仕事していました。だけど、名古屋は人も多くてライバルも多いし、名古屋でやる意味が見出せなくなっていた。改めて生まれ育った多治見に目を向けた時に、まちづくり会社のたじみDMOさんとの縁ができて、面白い人たちがいるんだと気付いた。
平子 : 結局、人との出会いですね。
二橋 : 良い時代も悪い時代も含めて、幼少期から多治見を知っていることは自分の強みだと思えたんです。あとは年齢もあるかもしれない。ノスタルジックでゆるい雰囲気も、いいじゃんって思えるようになった。

いままでの話にも出ていましたが、これからの5年をどう過ごしていきたいですか?長くも短くもない5年という単位を二橋さんはどうイメージされていますか?
二橋 : いままではプレーヤーメインでしたが、今度はマネジメント側へ。プレイヤーでありながらマネジメントもしつつ、次の世代の方たちを受け入れていける環境づくりをしていきたい。陶芸のジャンルで若い作家さんをどんどん打ち出すのと一緒で、僕はジャンルを問わず、自分で「コト」を起こしたい人たちとチャレンジできる場所をつくりたい。多治見には物件はあるけれど気軽にチャレンジできる場所がない。それを5年後には、そういう場を一つ設けられるようにしたいですね。
長山 : 面白そう !
二橋 : 年齢、性別、ジャンルの垣根は関係なく、「多治見を面白くしたい」という思いのある人が集まるような一つのハブをかたちにできたらいいですね。
世代やジャンルの垣根なく、何かを始めたい人が集まるハブをつくる。
二橋 : いまは公共的な建物がどんどん売りに出ている時代です。それをスケルトンにして活用する方法も主流になってきている。それがまだ多治見にはないからやってみたい。店のある駅前エリアや笠原町でも物件を探しています。あとは、誰が軸となって人と人をつなげるかが大事なんですよ。自分がその役割を担って事業になればいいかな。いまは構想段階ですが、自分がある程度アクションを起こして見せていかないと本気さが伝わらない。
平子 : ワクワクしますね。駅前エリアを活性化させたい !
二橋 : 家族はヒヤヒヤですけれどね。笑 僕は1を10や100にすることよりも、0を1にするのが好きなんですよ。0が1になる喜びを感じると、あえて茨の道を通りたくなっちゃうんでしょうね。

平子 : ……よく言われるかもしれないですが、二橋さんは政治家に向いてそうですよね。
二橋 : よく言われます。でも、基本的にはルールに則って動く品行方正なスタンスは苦手なんで。笑
平子 : いまは若い議員も増えているし、それは求められないんじゃないですか。ガチガチに固まった状況を二橋さんみたいな人が動かしていくことの方が大事だと思う。
市政で動いて、まちを変える。新しいアプローチになるかも !
二橋 : もしタイミングが来ればあるのかもしれないですけれどね。いまは同世代の市長が多治見で動いている。まちづくりの面ではうまく巻き込んでもらうことは大事だと思っています。
どんな仲間とどんな仕事をして、どういう人生を送っていくの か

PRODUCTS STOREと同時期に店をスタートし、コロナ禍を経て、新たなフェーズへ向かう二橋さん。最後に、50代からの働き方や目指したいスタンスを聞かせてください。
二橋 : 20歳の20年後と50歳の20年後では、圧倒的に「20年」の内容が変わってくる。これから先、どんな仲間とどんな仕事をして、どういう人生を送っていくのか。いまはSNSを見ていても、若いうちは「お金が全て」という考えでがむしゃらな人も多い。でも、年齢を重ねてくると、お金よりもどういう風に過ごしていくのかが大事。こうやって仕事ができているのも当たり前じゃないし、生きていることも当たり前じゃない。
平子 : 本当にそう思います。
二橋 : 何かを続けていくためには家族や仲間が大切。自分ではできることは本当に限られているからこそ、誰だったら自分にないものを快く貸してくれるのか。
平子 : なるほど。
二橋 : いままでは服のコーディネートでもプラスの精神で来たけれど、いまは引き算を理解できるようになった。年齢を重ねていくとシンプルな服装や暮らし方になっていくのは、こういうことなのかと実感しますね。本当に必要な「もの」と「コト」とだけ関わり、より濃い内容になってくる。それがシンプル。シンプル イズ ベストという言葉につながっていくのかなと思います。

平子 : 価値観の転換が起こり、僕らにとっても学びが深い5年間でした。多治見で二橋さんの存在感もかなり高まったんじゃないですかね。
二橋 : そうだったらうれしいですね~。そういう存在であり続けたいですね。
平子 : 選挙も有利になりましたね。笑
長山 : 話をどんどんそっちに持っていく。笑 でも、多治見に二橋さんみたいなリーダーシップが強いタイプは少ないと思います。
二橋 : 意識しているつもりはないけど、よく言われます。あと、ここまで多治見愛を前面に出している人も少ないって。
平子 : 私利私欲が前に立ってないことが、みんなをまとめる力になると思う。初めに私欲があると話が広がらない。多くの人は「それってどれくらい儲かるの?」というところから考えがち。
二橋 : でも、ビジネスの上ではその視点も絶対に大事ですよね。
平子 : バランスが難しいですね。
二橋 : どちらから始まっているかなんですよ。僕は、やりたいことが先行していて、その後にお金になるのかどうかを考える。普通は、利益を出せる事業なのかを考えた上でGOなんですよ。

ビジネスとして成立するかどうかよりも「自分がやりたいのか?」から考える。
二橋 : 僕は「面白そうだからやってみよう !」と動いて、「違った、修正しよう !」となる。だから出費は多い。トレーラーハウスも思いついて買ったけれど、実際に使ってみたら出し入れが面倒だし、イベント出店に持っていくのも大変だったので売りました。緻密に計算していない。でも、骨折はしないだろうと思っています。擦り傷はするかもしれないけれど、それならまあいいやって !
平子 : そういうところが強いと思いますよ。
二橋 : この感覚は必要だけど客観的にブレーキをかけてくれる人もいないと続かない。CHIC…!は僕がアクセルで、マルヤさんがブレーキをかけている。いまの俺があるのはマルヤさんがいるおかげなんです。僕だけなら店が5年も続いていない。
平子 : 自分にないものを得意な人がいる。役割分担ですね。
二橋 : あとは、アイデアを気軽に相談できる仲間がいるといいですね。組織でも、地域の連携でもいい。どこまで本気で関われる人が周りにいるのか。今年は本気で関わりたい人としか一緒にやらないと決めました。「どっちでもいい」と思うならやめる。限られた時間をより有効に使っていける手段だし、すごくシンプルになる。「これ、本気でやりたいか?」って口癖のように言っていますね。

自分の身の周りから何かできることを始めてみることも大事だと感じます。多治見という大きい枠よりもっと細分化した地域に関わっていく。半径10メートルでの変化が結果的にまち全体に広がる。みんなが影響し合っていくんですよね。
二橋 : みんながそれぞれの池に一石を投げているんですよ。波紋をつくるには、やっぱり一石を投じないといけない。あとは広がっていくから、まずはどこで投げるのか。
平子 : たしかに。
二橋 : いろんなところに波紋があって、それが重なったところに新しいものが生まれる。やっぱり子どもたちのことを考えると衰退して終わったまちにはしたくない。多治見は、きっかけをつくるまちとしての可能性があると思います。……最近は自分が何屋なのか分からないですよ。笑 でも、やっぱり何かのために動くのが苦じゃないんですよね。乞うご期待で!
平子 : やっぱり市議会議員として、自由に動けるようにしていきましょう !
長山 : 結局、その流れに。笑
二橋 : いまはまだ分からないけれど、もしも政界に出た時はよろしくお願いします。笑 その時も、この迷彩服で行きますね !
平子 : すごくいいと思う !前向きで楽しいお話をありがとうございました。

喫茶わにとの往復書簡
CHIC…!さん
タジコンから生まれた多治見の人とまちをかっこ良くする人。
熱さと信念はハンパないです。