ben × PRODUCTS STORE たっぷりな座談会
<今回の参加者>
ben ⼩森 欣也、梨恵
株式会社ユープロダクツ 代表取締役 平⼦ 宗介
PRODUCTS STORE店⻑ ⻑⼭ 晶⼦
インタビュアー・編集者 笹⽥ 理恵
撮影 加藤 美岬
<場所>
ben(岐⾩県多治⾒市本町5-6-1 R.office B1)
2025年10⽉でPRODUCTS STOREは5周年を迎えます。1周年では「私たちが⽀えられている多治⾒の店を巡り、つながりを感じてほしい」という思いから「PRODUCTS STOREが多治⾒をひかえめにジャックする2⽇間」と掲げてコラボイベントを⾏いました。
PRODUCTS STORE 1 周年イベントレポート
https://news.products-store.jp/products-story/1st-event-report/
5周年を迎えるにあたって、まちの皆さんをより知ってもらうべく1周年の参加店と座談会を⾏いました。最後となる8店舗⽬は「ben」。⼩森欣也(よしや)さん、梨恵さん夫妻に話を伺いました。
benとユープロダクツは、⾃社パンフレットでの料理提供・撮影、ものの価値を再定義する「yield」などさまざまな場⾯で複合的に関わってきた関係です。今回は、多治⾒でbenが始まるまでのストーリー。そして、⼆⼈の仕事観や⼈との関わり⽅など「benの哲学」を余すところなく伝えてもらいました。
きっとどんな仕事をしている⼈でも、共感する考え⽅、ハッと気付かされる視点があるはず。⼆⼈の話を介して読者の皆さんが⾃分⾃⾝との対話が始まる気がします。ぜひ店を訪れてbenの世界観にも触れてほしいです。まちでともに⽣きていく同志が集う、5周年企画の最後にふさわしい座談会となりました。
飲⾷店として、「出⼝」としての責任を全うする

まず、ben を⽴ち上げた経緯を伺いたいです。いつ頃から飲⾷店を始めようという意識があったんですか?
欣也 : 僕は会社の組織に向いてなかった。右を向けと⾔われても、それが正解だと思っていないから右を向きたくない。勤めていたら楽だし休めるけれど、⽴場が上になればなるほど精神的に疲弊する。もちろん会社の⼀個⼈だから、会社が⽬指すものは⾃分の下にいる⼦たちに伝えなきゃいけないけれど本⼼ではない。こんなに疲れることは、もうやっていられない。だったら何ができるかと考えたら、前にやっていた料理しかないと。
平⼦ : 会社員の経験を踏まえて、ご⾃⾝でお店を始めたんですね。
欣也 : 僕の考え⽅としては、飲⾷店は「出⼝」だから。皆さんに作っていただいた材料という⼊⼝を、最後に出す⽴場だと思うと責任を感じる。
物価⾼騰の世の中で、来年の状況は全く読めない部分もあります。
欣也 : とはいえ世に合わせない。⾃分が持つ信念を曲げた商売は続かないから。例えば、タピオカブームは突然、原材料を作る⼈たちに⼤量の注⽂がきて、パタンと無くなった。そんな⽣産性のない商売は嫌だなと。なるべくコンスタントにうちの⾁屋さん、⿂屋さん、野菜もずっと買い続けられる。それがたとえ少なくても途切れなく注⽂を続けられる商売。それが僕らに課された「出⼝」としての役割。

benがオープンして、今年で8 年⽬を迎えます。多治⾒でお店を始めることは決めていたんですか?
梨恵 : 多治⾒と決めてはいなかった。もし縁があって決まったら県外でもよかったです。
欣也 : ⾃分が住むまちだから、最初は多治⾒を中⼼に探していたけれど、1年経っても⾒つからなくて「多治⾒じゃなくてもいいか」と話していたら、よくしてもらった不動産屋さんに「物件としての情報は開⽰していないし、お⾦もかかるけれど⼀回⾒てみる?」と⾔われて。
梨恵 : ここは、もともと喫茶店だった場所。
欣也 : 多治⾒から名古屋に出るのはJR中央線で1時間かからないからこそ、かっこいいと思う店が⾃分が暮らすまちにあった⽅がいい。多治⾒の⼈が「名古屋の友だちに聞いて来ました」ということも多かった。
⻑⼭ : 逆パターンですね。
欣也 : いまは情報が⼿に⼊れやすいし、より広く浅く拾えるようになったから、⾃分の住んでいるまちを掘り下げて探すよりも先に外の情報が⼊ってくる。⼈⼝10万⼈ほどの地⽅都市に住む⼈たちは、みんな「何にもない」と⾔う。それはものすごく悲しい。最近は変わってきたけれど、7年前に始めた時は「多治⾒には何もない」と⾔われている時期だった。

多治⾒に暮らす⼈が、まちにかっこいい店があると思えるように。
欣也 : でも、多治⾒のまちに合わせるつもりはなかったし、都会で流⾏っていることを多治⾒でやろうとも思わなかった。⾃分たちがかっこいいと思うものじゃないと続けられないから。
梨恵 : 合わせられるほど多治⾒の状況を知らなかった。NEU!はいろいろ教えてくれたけれど聞ける⼈も多くなかった。まちのことまで考えられる余裕はなかったかな。
平⼦ : benさんの料理のスタイルは、初めから決めていたんですか?
欣也 : ⽚肘張らずに来てもらえるけれど、かっこいい店。「いい店だけど、⼀⼈1万円かかる」という店は年に何回⾏けるのか。それよりも⽣活の中で⾏けるくらいの⾦額設定。ちょっと背伸びするけれど、それでも⾏きたくなるくらいの店にしたかった。
ben をつくってくれた⼈たちが、誇れるような店にしたい

平⼦ : 我々のパンフレット撮影でbenさんにいろんな種類の料理を作っていただきました。夜benでも欣也さんのレパートリーは幅広い。あれだけの引き出しがあるにも関わらず、供給先のことも考えてランチメニューは2種類に絞って続けている。誰でもできることではないです。
欣也 : お昼のメニューは丸7年、1回も変えたことがない。料理⼈の思考になるけれど、同じものを作り続けることがどれだけ⼤変か。だけど、続けていくと絶対にうまくなるという信念がある。1年⽬に⾷べたボロネーゼと、7年⽬に⾷べたボロネーゼは別物だと思っている。別に看板商品にするつもりはないけれど、1年に何回か「benのボロネーゼが⾷べたくなる」とインプットされていることがすごく⼤事な気がしていて。携帯で探し当てた情報より、脳裏に刻まれたものがあって久々に⾏ってみようかなと思える店。何⼗万⼈フォロワーがいるSNSよりも、思い出してくれる⼈がいる⽅がいい。

アップデートするために、常に改善できる部分を探しているんですか?
欣也 : 探しているし、やっている。良くしたいしかない。それは材料よりも、⾃分の技術として野菜の切り⽅や⽕加減とかをものすごく気にしている。
梨恵 : 五感を全部使うもんね。
欣也 : 全部使う。レシピでは⽂字にできないものをものすごく⼤事にしていて。僕の中で、料理で⼀番⼤事なのは「⽿」。
平⼦ : ⽿なんですね。
欣也 : ⽕を⼊れて⾳が変わるのは物の状態が変化してきている証拠で、それを聞き逃すとタイミングを逃してしまう、⽿の次に⿐、その次に⽬が⼤事。僕は仕込みの時、逃したくないから⾳楽はかけない。
⻑⼭ : ストイック。

欣也 : とはいえ、同じものを作り続けているから⼯程は変わらない。そうすると、そんなに頭を使わない。じゃあ、何で考えるかというと指で考える。⾁の⽔分量とか触らなきゃ分からないことを⼿が考える。今⽇は⽟ねぎの⽔分が多いから⽕を強くしないと、とか。いつも同じ状態の材料が届くわけじゃないから⼿と指で考えることを繰り返している。
⻑⼭ : 陶芸作家みたい。
平⼦ : 求道者的な取り組みは、苦しさもあるのでは。
欣也 : 仕事と思ったらやりたくないし、なるべくここにも来たくないけれど、これしかないから。今⽇は休⽇だから会社に⾏かない、というような仕事じゃない。休みの⽇にしかできない仕事がある。僕だって遊びに⾏きたい気持ちもあるけれど、この仕事を選んだ時点で、⽣活の⼀部にしないと続かないから。

やり続けた先に、得たいものはありますか?
欣也 : 得たいものというより、何が⾒られるのかなって。答えがあって答えに向かうよりも、⾃分では分からない答えに突き進んでいく⽅がより続けられる。
梨恵 : 私は始めた責任で続けているかな。それは⾃分⾃⾝よりも、ここを⼀緒につくってくれた⼈。デザイナーさんや⼯事してくれた⼈、現場の⼈たちの姿を⾒ていたから、私はそれが焼き付いている。あの⼈たちがいつ来ても恥ずかしくない仕事、誇れる店でいたい。いま関わってくれている⼈たち。皆さんに対しても同じ。誰かに紹介して「たいしたことなかったわ」と⾔われるんじゃなくて「良いお店を紹介してくれてありがとう」と思ってほしい。
⾃分たちがかっこいいと思うかどうかが軸だけど、⾃分たちだけでつくったben ではない。
梨恵 : ⾃分の価値観以上に「benという価値観」を⼤切にしたい。それは欣也がつくったものでもなくて、ここをつくってくれた⼈、⼀緒に関わってくれている⼈たちによるもの。benを良いと思ってくれている⼈たちを裏切れない。
平⼦ : そこがbenさんの哲学に現れていると思います。
消費者として何を選び、何に「投票」するのか

平⼦ : 飲⾷店の枠に留まらないbenさんは、洋服や雑貨も販売し、5周年で「this road」という企画展も⾏っています。奥⾏きのあるbenというプロジェクトは、どういう考え⽅で成りたっているんですか?
欣也 : その場だけで終わってしまうお祭り的なことが不得意。いろんなことを考えて、周りの⼈に相談して、のちに思い出して「あれは特別だったね」と感じることしかできない。これは個⼈的なことだけど、濃度が薄いことがすごく嫌で。濃ければいいわけじゃないけれど、やるならちゃんと伝えたい。
梨恵 : 薄めでは、やれないんだよね。すぐ深く考えちゃう。

平⼦ : 話が⾶躍しますが、世の中が混沌としている中でも、まちの⼩さな経済の中で皆さんが純粋に⾃分の⽴場を全うしていることにものすごく光を⾒るんです。
欣也 : 僕の根底に世の中は不公平で、理不尽の上に成り⽴っているという考えがある。それが良いか悪いかは別として、その上に我々がいる。決して誰もが公平で、誰しも整合性がとれるような社会ではない。だとしたら、より抗うことしかできない。そうじゃないと社会が⾯⽩くならない。
平⼦ : 同感です。
欣也 : 「やっても無駄だ」「ダメに決まっている」と、やる前から考えるけれど⾏動できる⼈の⽅が魅⼒的。そうじゃないとものが⽣まれてこない。いまは上っ⾯の情報はたくさんあって、飲⾷店を始める上でも必要な薄い情報があたかも本当かのように信じてしまうけれど、実際にやってみたら簡単にうまくいくわけがない。「それでもやる」という気概がないと何も⽣まれてこない。

⼿っ取り早く稼ぐ、リスクを取らずに成功する⽅が良しとされがちな時代で「それでも⾃分が思うようにやる」という抗い⽅がある。
欣也 : 料理は分かりやすくて、失敗した料理を続けた⽅が絶対うまくなるわけ。失敗が経験や知識、感覚になる。薄い情報だけで失敗せずに成し遂げたとしても、それが本当に良いものかどうかは判断できない。失敗しないことよりも、チャレンジしている⽅がよっぽどかっこいい。できれば、それを公⾔した⽅がより⼈間味を感じる。みんな隠そうとするじゃない。
⻑⼭ : 失敗=恥ずかしいことという感覚ですよね。
欣也 : 恥ずかしいことじゃない。「失敗しちゃったけど、もう⼀回やるから」という⽅がよっぽどかっこいい。
外から⾒ているとben さんも失敗しているようには⾒えない。でも話を聞くと⼭ほど失敗して、いまがあるんだと思えます。
梨恵 : だって、店が⽔没したんだよ。すごい失敗をしてるよ〜。
⻑⼭ : あれは⽔害。抗えないです。
欣也 : 個⼈の飲⾷店の美学は⾔葉にしないと分からない。お客さんは気にしていないから聞きもしないけれど、「⾷⽂化」と同等に「飲⾷店⽂化」がそれぞれの店にあると思う。少しでもその⽂化を知る機会や話せる場、聞けるような場があればいい。店を知ることにつながるし⽬指す⼈が増える。
平⼦ : benさんも飲⾷店として⼀つの背中を⾒せている。きっとbenで⾷事をして飲⾷店をやりたいと思った⼈が、この7年間で少なからずいると思う。僕らも影響を受けているし、すごく⼤きな価値だと思います。

ben さんがこれからに対して考えていることはありますか?
欣也 : いろんなことを考える以上に環境の変化が早い。現実に気温が⾼すぎて⿂が⼿に⼊らないし、ましてや獲れたとしてもめちゃくちゃ⾼い。
梨恵 : ⽔温が上がっているから、どうしても品質も下がってしまうんだよね。
欣也 : いまの価格で⾷べ物が⾷べられない時代は⽬の前に来ている。何を買って⾷べるかは、消費者の投票。5kgで7,000円の⽶は買えないから3,000円の備蓄⽶を買う。それも投票ということは、7,000円のお⽶を作ってくれた農家さんたちは再来年いないかもしれない。それは陶器や飲⾷店も同じ。今後、個⼈店は減っていって⼤きな資本⼒のある店舗しかないまちになるかもしれない。それは、⾃分たちで選んでいる。
平⼦ : その想像⼒が消費者に求められる時代ですよね。
欣也 : もちろん家庭環境とかいろんな事情はあるけれど、⾦額の⾼い・安いは関係なく、⽇頃買っているものは全てそういったことに直結しているから。
「昨⽇で閉店しました」という理想の幕引き

ben を始めた頃に⽐べると、まちへの関わり⽅や感じ⽅は変わりましたか?
梨恵 : 役割はよく分かっていないけれど、まちの⼀つのピースになっていればいいかな。絶対に必要とかではなく、気付いたら多治⾒の⽂化の中の端にいる。そういうお店がたくさんあることが、まちをつくると思っています。
平⼦ : いつもうちのDMも、さりげなく発信していただいてありがたいです。
欣也 : うちはDMをもらったら、お客さんに⼿で「いまこういうことをやっていますよ」とお客さんに渡すし、Instagram上でも紹介する。このぐらいのまちの規模だから、そういう関係性がもっと広がっていくとまちの情報が交差していくはず。⾃分の店の発信だけで必死なのも分かるけど、もうちょっと⼼の余裕があるといいのにな。
梨恵 : いまは情報がどんどん勝⼿に⼊ってきて、偏った新しい情報が重ねられていく。でも、まだまだ深掘りできてない良いものがたくさんあるから、もっと深める情報があればいい。深さを求める⽅向性も⼤切だと思う。
追いつけないほど新しい情報がどんどん⾶び込んでくる。かといってSNS と距離を取ると必要な情報が漏れてしまう。すごく難しい時代だと感じます。だからこそ、直接⼿で渡したり、話したりすることの価値も⾒直されている。
梨恵 : そう、なんだかんだ⼿渡しだったり、⼝で説明することだったり、体感することが必要だと思う。やきものも同じで、作家さんの⼯房へみんなを連れてくことは難しいのかもしれないけれど⾒てみたい。作り⼿の⽣の声も聞きたいから、トークショーをしてもいいのかもしれない。もっと作り⼿の世界観を感じられる。
⻑⼭ : 私は、作り⼿と産地に魅⼒を感じて美濃に来ました。そういう⼈が⼀⼈でも⼆⼈でも増えることが、産業が残っていく⼀つの⼿段になるはず。この地域だからこそ、すぐそこに作家さんがいる。
平⼦ : ⼀⽇の中で、作家に会わない⽅が難しいですもんね。

欣也 : もっと細分化された、何かに特化している職⼈さんたちにも踏み込んで発信したら、より魅⼒的な産業、地域だと伝わると思う。前にも⾔ったけどユープロダクツの学校を作ればいい。産業の成り⽴ちとか、型コース、転写コース、バイヤーコースとか。
梨恵 : プロを⽬指すわけじゃなくても、地域の⼈も知りたいはず。きっと「陶器はもらうもの」だなんて軽はずみに⾔わなくなる。
平⼦ : 昔は転写や絵付けの職⼈さんが多く、おばあちゃんや⾝内にもいっぱいいました。すごくクリエイティブで技術のある仕事。今後、どうせなら地域の産業と関わってみたいと思う⼈が増えるのかもしれない。地域の労働⼒とマッチングできる可能性を⾒出せるのは、僕らの⽴ち位置ならではだと思う。
ユープロダクツの未来に向けた、すごく具体的なアイデアをいただきました。
平⼦ : 我々の能⼒と企画⼒の課題はありますが、ヒントがいっぱい。
欣也 : 温度感が⼈を動かす。どう「温度」を作っていくのかしかない。いいですよ。学校ができたら、僕がたまに給⾷を作るんで。笑
梨恵 : 給⾷、いいね!

欣也 : 料理の修⾏していた頃、当時の店は誰に作っているのか分からなかった。それが嫌でフルオープンキッチンにしたんだけど、いまは僕も「あの席に座っている⼈のために作っている」と思うし、⾷べる⽅も「いま盛り付けている⽫は私のかな」と感じる。それがお店の温度感になる。
平⼦ : そこが価値ですよね。だって、本当は⾒られないほうが楽じゃないですか。
⻑⼭ : 緊張感がありますよね。
欣也 : 失敗できないからヒリヒリするけれど、温度感の⽅が⼤事。
7年経っても、ben のレンジフードはいつも美しく輝いている。これを保つのはものすごく⼤変なことだと訪れるたびに思っています。
欣也 : ⾷べること=命をつないでいる。だから衛⽣は、基礎中の基礎。料理をしているよりも掃除の時間の⽅が⻑いんじゃないかな。でも、それがbenであり続けられる理由かもしれない。

平⼦ : 店の⽬標や未来のイメージはあるんですか?
欣也 : 今年の⽬標はないけれど、どうやって店を閉めようかなと考えている。それを考えてないと続けられない。
幕の引き⽅を考えながら続ける。
欣也 : そう、映画じゃないけどラストをどう盛り上げていくか。例えば、ここを誰かに継いでもらうよりも、benというあり⽅としてどういう⾵に終わるのがいいのか。個⼈的な理想は「昨⽇で閉店しました。ありがとうございました。」がいい。
終わりだと事前に伝えずに?
欣也 : いまのところ、そのくらい潔い幕引きが⼀番benらしい。⾃分はやりきれた、と思えるぐらいやりたい。
⻑⼭ : 閉店の翌⽇に来たら泣いちゃうかもしれない。梨恵さんと欣也さんで思いは共有するんですか?
梨恵 : 私は欣也に⽬標を聞くけれど明確なものは出てこない。だから意思の確認はする。いま⾃分たちは何を⼤切にしていきたいのか?という⽅向性については常に話しています。別に私たちはプライベートと仕事が分けられていないから、⽣き⽅は各々違っていても、仕事として向かう⽅向は合っている。
平⼦ : そこで⼤きく意⾒が⾷い違うことはない?
欣也 : あまりないかも。「なるほど、そうだったな」みたいなすり合わせ程度かな。
夫婦だけど、仕事仲間としての連携が強い。気持ちいいパートナーシップです。
梨恵 : そこは良好でいたいとは思う。隠せないし。

平⼦ : これからは、さらにbenさんで⾷べる時は、これが最後かもしれないと思うと味わい⽅が変わりますね。
梨恵 : どの店でも、いつ何があるか分からない。だから、本当に投票だと思う。
欣也 : 「昨⽇で終わりました」なんて⾔えるのは120点だと思う。そんな幸せな店ないよ。
梨恵 : ……私は、近い⼈には⾔っちゃうかも。「やめるかもしれない」って。笑
欣也 : いいよ。勝⼿に閉めるで。笑 「今⽇は⾏かないの?」「いかんよ。昨⽇で終わり」って。
⻑⼭ : 梨恵さんにも⾔わないのは衝撃すぎる。笑

平⼦ : お⼆⼈と話すと、たくさん考えることをいただいて帰っています。それはやっぱりbenさんならでは。
欣也 : 偶然なのか、必然なのか話すことができている関係。知らねーよじゃなくて、全然違うことをやっていても、どっちみちこのまちにいるんだから⼀緒にいきましょうよというだけ。
平⼦ : ありがとうございます。幸せなことです。

茶菓小との往復書簡
よしやくんへ
美しく独創的なお料理がいつも天才だと思います。りえちゃんへ
いつも笑顔でスマートな接客がかっこいいです。りえちゃんのフォカッチャが大好きです。お二人のこだわりが沢山詰まったお店。また次もと行きたくなるお店です。