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PRODUCTS STORE

PRODUCTS STORY

中川夕花里 × PRODUCTS STORE
たっぷりな座談会

<今回の参加者>
陶芸家  中川夕花里
株式会社ユープロダクツ 代表取締役 平子宗介
PRODUCTS STORE店長 長山晶子
インタビュアー・編集者  笹田理恵


多治見市のシェア工房・司ラボで作陶をする中川夕花里さん。モザイクタイルをモチーフとした繊細でカラフルな作品は、多くのファンを魅了しています。現在(23年1月29日まで)、ガラス作家・松下祐子さんとの2人展をPRODUCTS STOREで開催。以前よりお取り扱いはあったものの、この機会に改めて夕花里さんにお話を伺いました。

大阪府出身で京都精華大学に通っていた夕花里さんが多治見へ引っ越してきた経緯、夫であり土器作家の田中太郎さんとの暮らし、そして現在の作風に辿り着く経緯や作品づくりでの「ご褒美」について、ざっくばらんに話してくださいました。夕花里さんの朗らかな人柄に包まれるたのしい座談会になりました。

【中川夕花里 × PRODUCTS STORE】
01

京都で作陶をしていた頃の苦悩があったからこそ

長山 : 私は大阪出身ですが、夕花里さんも高槻市出身ですよね。

中川 : そう、高槻はめちゃ京都寄りやから、逆に大阪のことはあまり知らなくて。

平子 : 京都の精華大学には、実家から通っていたんですか?

中川 : そうですね、大学に行く条件が「家から通えるところ」だったので。

平子 : クリエイターが多い精華大に入るってことは、その時点で自分のやりたいことや方向性が決まっていたんですか?

中川 : 中学の時から芸大に行きたいと思っていて。経済や英語とか全然分からへんし、普通の大学で勉強しているイメージがさっぱり湧かなくて。それだったら興味あることをやろうかな、と進路を決める時にいろいろ考えました。

大学に入る前から、陶芸に興味があったわけではないんですね。

中川 : そうですね。まず、絵か立体だったら絵が壊滅的に下手すぎるから立体だった。立体も物体を削って形を出すのではなく、貼り付けるやり方じゃないと頭でイメージできない。触ったことはないけれど、できる・できないが想像がついたから、それだったらやったことないものにしようと思った。最初は、陶器じゃなくてガラスがやりたくて、調べたら精華にガラスの選択授業があったので。

長山 : 最初はガラスに興味を持って入学されたんですね。

中川 : 蓋を開けてみたらガラスの授業は1年の選択授業で、1週間のうちに1時間だけ。基本的なことしかできひんくって。でも、やっていくうちに陶芸に興味を持つようになった。全く知識がないまま入ったから、釉薬って何?こんなに焼くの?みたいに、だんだん陶芸に興味を持って、気付いたら今もまだ続けてる。

平子 : 夫である田中太郎さんとも大学で知り合った?

中川 : そうです。私は後輩。向こうが大学院まで行って、私は学部卒だったからちょうど卒業のタイミングが一緒で。太郎ちゃんは多治見に来ると決めていたし、私はまだ京都に残りたかったから、卒業間際に私が「ねぇ、付き合わへんの?」ってめっちゃ脅して。笑 そこから数年間は遠距離でしたね。

平子 : すごい。笑

大学卒業後は、京都で窯を借りて作陶されていたんですね。

中川 : 京都は〇〇窯みたいな大きい窯を焚いたり、お弟子さんがいたりするようなところが多くて。大学の同期も4人くらいしか陶芸を続けていないし、就職をしながら作品を作っているから窯は持ってない。シェア工房もこっちに比べたらすごく少ないから、個人のつながりがないと窯を借りるのも難しかった。毎月、定期を買って実家から電車で京都の工房へ通って、夕方に作業が終わったらバイトしに大阪へ戻る。すごく過酷でしたね。

長山 : それでも数年は京都で作っていたんですよね。心が折れそう……。

中川 : 「作品を発表するわけでもないのに、この生活は何なんだ?」と思っていました。向こうにいた時は「このままどうなっちゃうんだろう」と考えてばかり。ただ、大学の教授に「続けることが1番大変で、1番すごいことだ」と言われたことだけは覚えていて。その時にひしひしと「確かに続けるって大変だ」と痛感した。いま考えてもよく続けられたなとは思う。でも、その時の経験があるから、いま仕事にできている状況がより一層ありがたいし、がんばろうと思える。あんな風にしんどい思いをしておいてよかったと思います。

【中川夕花里 × PRODUCTS STORE】
02

タイルと作品、多治見をつなぐ不思議な縁

平子 : その後、多治見に引っ越してくるんですね。

中川 : 最初は友だちもいないし、どうしようと思っていました。多治見に引っ越してきて2日目に、太郎ちゃんがながせ商店街の玉木酒店さんの角打ちに連れて行ってくれて。その時にいま入居しているシェア工房・司ラボのオーナー、加藤貴也さんと知り合ったんです。貴也さんに「工房を探している」と話したら「うちを使いなよ」って。それが6月頭で、司ラボの入れ替えのタイミングが6月末だったから、ちょうどいい時期でポンポンと話が決まった。

長山 : 絶妙なタイミング。

中川 : でも、最初は知り合いがいないから不安すぎて、玉木酒店の陽子さんに「意匠研(多治見市意匠研究所)に行った方がいいかな?」と相談してた。改めて陶芸を勉強する気はなかったけれど、同世代の子が多いし、コミュニティを広げるために通おうかなって。結果、行かなくてもなんとかなった。

太郎さんが多治見に来ていなかったら、関西から離れる気はなかったんですか?

中川 : 全然なかった。私は、ちょうど結婚するタイミングで移ってきたから、もし太郎ちゃんが他の場所にいたらそっちに住んでいたと思う。太郎ちゃんも最初は多治見か信楽で迷っていたし。多治見の方が伝手もつながるし、卒業生もいて何とかなりそう、と思って選んだけれど。でも、私たちはこの土地に馴染みやすかったから結果的に大正解。

長山 : 京都にいた頃から器を作っていたんですか?

中川 : 大学ではオブジェを作っていて。でも、卒業してからオブジェをどうやって売っていいか分からなくて、ただ作っているだけだった。これでご飯を食べていけるか、ずっと続けられるかを考えたら無理やなと思って。私の勝手なイメージですけど、オブジェっていうのは自分の意見を不特定多数の人に「私はこういう思考がある」と発信しているもの。私はそれがしたくて陶芸をやっているのかな……と考えた時に違うと思った。器は、誰かの生活に寄り添っている。個と個のつながりの中に自分の作品がある。その方が自分の中でしっくり来るから、日常使いできる器や壁掛け、ちょこっと飾れる置物を作りたいと思って移行しました。

長山 : 作り続けてきたオブジェから離れる決断をされたんですね。

中川 : オブジェに限界を感じつつも、最後に京都で器とオブジェが半々の個展を開催したけれど反省が多かった。やってよかったけれど、展示を経て、ますます器を作ろうと思えた。個展で器があんま売れへんかったのも悔しいし、器とちゃんと向き合おうと決めて多治見に来た。こっちは器を作っている作家さんがめっちゃ多いから、それも全部タイミングやったんかなと思う。

平子 : 夕花里さんはタイルに興味を持って、器に落とし込んでいると思うんですが、作風との出合いは多治見がきっかけだったんですか?

中川 : 実は、引っ越してくるまで多治見がタイルの産地って知らなかった。街中にタイルがあるから「ここも、ここも、なんで?」ってびっくりしたくらい。住んでいる家がタイルの一大産地・笠原に近かったから、最初の1年は自転車で「このゴミステーションのタイルが1番きれい~」とか観察しがら街を爆走する日々でしたね。

平子 : タイルが好きなら見所がいっぱいありますよね。

中川 : でも、多治見に移る寸前ぐらいからタイルをモチーフにしたお皿を試作していたんです。越して来てからも「今後はこういう作品をやりたい」と多治見で会う人に見せたりしていた。その時は「あ、そうなんだ」で終わり。それも悔しいと思いながら試行錯誤をしていたかな。

多治見に来る直前にタイルモチーフの器を作り始めるなんて縁を感じますね。

中川今までは「運命ってあるんですね」みたいな人の話も「へー」って感じで聞いていたけれど、自分がこんなにしっくりくることがあるとは。もう多治見に来て正解ってことかと思った。

【中川夕花里 × PRODUCTS STORE】
03

「窯出し」というご褒美があるからこそ続けられる

平子 : どちらも作陶をされているご夫妻には毎回聞くんですけれど、お互いの作品の意見を交わし合いますか?

中川 : いや、基本的にはしないですね。私の作品は磁器やし、太郎ちゃんは土器という真逆のもの。分かっている部分もあるけれど、何も言わんとこみたいな感じ。あんまりお互いがお互いの作品に興味がない。

長山 : 仕事の相談をすることもなく?

中川 : 相談もない。あまり意識してないけど、お互いの触れちゃいけない部分がある。これは太郎ちゃんの世界、これは私の世界。必要以上に踏み込まない。それがうまくやるコツ。

平子 : 多治見に来るタイミングで器に向き合おうと思って、いまの作風に辿り着いたと思うんですが、夕花里さんの現在地としてはどういう感触ですか?

中川 : やっと自分の作品になった、という感じです。多治見に越してきて4年経つけれど、1年目は作品をたくさん作って、いろんな人に知ってもらって、2年目、3年目は、新しい物やデザインを展開していくことに必死。そこから自分の中で咀嚼して、「私ってほんまにこれが好きなんやな」と掴めるようになってきましたね。ずっと「新しいものを作らなきゃ」という意識が強くて、イベントごとに新色や新しい形・柄を作らなきゃいけないと思っていた。でも結局、それは誰のため、何のためにやっているかを考えたら、「しなくちゃ」になった時点で、自分ではあまりやりたくないことだと気付いた。できることや作れるものが分かってきた上で「ほんまに自分のやりたいことや形、好きなものって何?」と自問自答できるようになった気がします。だから、やっと自分の作品にしっくり落ち着けた感じがします。

工房を見ていると、どれだけ細かい作業をされているのかがよく分かります。マスキングテープを貼って釉薬を塗るという工程は大変ではないですか?

中川 : よく周りの人から「しんどそう」と言われるけど、やっている時は淡々としていて、作っているのが当たり前の感覚。あとは、いかにストレスをかけずテープを貼るか。基本的には切り返しがなく1本の直線でテープを貼るのが楽。貼る順番を間違えると、筆塗りの時に痛い目にあう。「こことここの線がつながるでー!これは発明だー!!」って思いつくこともあるけれど、誰にも伝わらない。笑

長山 : パターンのじっくり見ていても、その順番が分からない……。

中川 : 昔からパターンや連続模様が好きでしたね。最近は街を歩いていてパターン模様を見ると自然にテープで貼る順番を考えてる。1筆で描くとこっちの方が早い、みたいに。

平子 : その境地に立つと、陶芸がより楽しくなりそうですよね。

中川 : 基本的にテープを貼るのも、色を塗るのも作業工程は全部好きなんです。でも、やっぱり窯出しが1番のご褒美。窯出しは「やっほー!」みたいな。「この子たち、かわいいよね!これこれ~!!」の感覚があるからがんばれる。だから、基本的にはめっちゃ楽しく制作はできているかな。

長山 : やっぱり窯出しが一番楽しい時間なんですね。

中川 : でも、窯出しする前日に夢を見ることもある。廃虚の地下で窯出しをしていたり、棚板に全部作品がくっついて取れない夢。基本的には悪い夢なんですよ。心配症すぎて、そういうところで勝手に自分のナイーブさが出てくる。笑

長山 :

作品づくりの先で、自分の作ったものが誰かの生活に寄り添って、その人たちが豊かになることも楽しみなんですよね。

中川 : もちろん、それがやっぱり大事。

平子 : いろいろな作家さんがいて、中には釉薬の研究が好きなだけで器を使う人の生活に興味がない人や、自分の手から離れた時点で関心がなくなる人もいたりして、モチベーションがさまざまで面白いです。

中川 : 私はとにかく使ってもらいたい。「もったいなくて使えない」と言う人もいるけれど、ガシガシ使ってほしい。だから、個人のお客さんでも時間があったら注文を受けています。時間がかかるから待ってもらうけれど、欲しいと言ってくれるのはやっぱりうれしい。あとは使っている写真を送ってくれたりすると、やってよかったな~と思える。そうやって喜んでもらえるから、がんばって次の作品を作ろうと思えます。

しかも、クラフトフェアでは自分でしっかり説明をして販売されるんですよね。

中川 : そう、お客さんをテントから出さないくらいしゃべっちゃう。笑

長山 : 自分で作ったものを自分で売るのは、むずかしいですよね。

中川 : 腕を組んでしゃべりにくい昔ながらの陶芸家の佇まいとか、私がお客さんなら嫌やし。それに私の作品は工程や経緯を伝えた方が愛着を持って使ってくれるから、話を聞いてもらうしかないと思って、どんどんしゃべりかけている。

平子 : 頼もしい!

中川 : 基本は内弁慶な性格やし、最初の頃は置物みたいに静かにしていた。でも、せっかく作ったなら、自分の作品のいいところを聞いてもらった方が私も気分がいい。たとえ隣のブースで寡黙な作家さんがしゅっと座っていても、関西弁でお客さんに「これ、めっちゃいいでしょ~!」と話してる。笑

平子 : いま、野望はありますか?

中川 : 最近、よく聞かれるんですけど、淡々と自分の作品を作り続けることが目標ですね。世界に売ってやろうとか、大量に作って多くの人に届けたいというより、1個1個、自分がよしと思った作品を届けたい。それは数じゃなくて確実さ。それが、自分の1番やりたかったことなんかなと思う。

平子 : 自分のやりたかったことに辿り着いているんですね。素晴らしい目標だと思います。

中川 : 私は手先が器用以外に特技がなくて。自分が他の人とコミュニケーションを取ろうと思った時に、「陶芸」というツールがあるから仕事にできているし、こんなにたくさんの人とつながれていると思ったら、やっぱり大事にしてかないといけないし、続けていこうと思えます。

 

【中川夕花里 × PRODUCTS STORE】
04

陶芸以外の人とも、つながりが持てる街のなかで

平子 : 多治見という街の印象はどうですか?僕は隣の土岐市で生まれ育ったので、客観視しにくい部分もあって。

中川 : こんなに陶芸以外の人とのつながりを感じられる土地は、いままでなかった。ふらっと行く店に知り合いがいて、そういう人たちが支え合っている輪に自分も入れているから、これだけ自然に制作ができるのかな。この土地ですごく良いサイクルが生まれているのをひしひしと感じますね。

平子 : 小さな経済としても循環していけたら健全ですよね。

中川 : ほんとにそれが面白い。京都にいたときには、陶芸の世界でも上下関係や派閥があって。若い陶芸家も少なかったし、自分が1人ぼっちだと思っていた。だから、多治見に来てすぐに工房が決まったこともそうだし、こんなに異業種の人たちがわいわい支え合っているのはいいな~って。こんなに地域の温もりを感じるなんて。本当に住みやすくて心地いいなと思いますね。

ちなみに、仕事以外で熱量を持っているものはありますか?

中川 : いや、もう全く。趣味も全然なくて。

平子 : 太郎さんの畑を手伝ったりします?

中川 : 仕事以外で土を触るなんて考えられない。太郎ちゃんの田んぼや畑はほんまに人手が必要な時だけ手伝いに行って、あとはノータッチ。収穫したものを消費するだけ。趣味もないんですよね……音楽もそんな聞かへんし、映画も見いひんし。料理も気が向いたらちょこっと作るくらい。あとは、お酒飲んで寝る。唯一続けられているのは、陶芸とお酒ぐらいですね。笑

長山 : いつも何を飲むんですか?

中川 : 最初にビールを飲んで、家だと焼酎か日本酒。嫌いなお酒はありません。夜の12時くらいに作業が終わって、家に着いて晩酌して2時半か3時ぐらいに寝る。この時間がないと続けてらんないよ!と思ってる。

平子 : すごい、若い!笑

中川 : 展示前でめっちゃ忙しくて夜中2時まで作業して、朝8時に起きて工房に行く時期があって……もうその頃は何にも楽しくなくて。やっぱり制作以外に充実していると思えるものがないと、心がすさんでしまう。やっぱり私は毎日ご褒美がないとがんばれないんだと思って諦めた。笑

 

では最後に、松下さんとの二人展について聞かせてください。

長山 : 今回も多治見の花店・カトリエムさんの装飾があるので花器は指定させてもらいましたが、それ以外はお任せです。ガラス作家の松下さんとどういうコラボになるのか楽しみです。今回の展示のオススメはありますか?

中川 : 今回はマグカップがすごく良いかな。自分の気に入っている柄を作りました。

ちなみに、夕花里さんから見てPRODUCTS STOREはどんな印象ですか?

中川 : 最初は、作家さんのもののイメージがなくて、きっちりかっちりしている店だと思っていたけれど、何回か展示を見に行ったら、ふらっと入っていい店なんだと思った。「器だけを売っている店」という印象だったから、個展やイベントを通じて親しみが増したかな。

平子 : 産地で自分たちの良いと思うものを発信したいというのが店の取り組みの趣旨。産地商社として作家さんとのやりとりする中で僕らの主観でいいなと思うものはあるけれど、取引先のお店のフィルターを通して発信することしかできなかったので、それがずっとジレンマでした。お店をやっていく中で、異業種の方や飲食店さんとのお付き合いが生まれたことも、僕らの本業にも良い影響があります。まだ2年ですけれど、そう感じますね。

中川 : まだ2年なんだ……もっと続いているイメージがありますね。

長山 : 皆さんのおかげです。

中川 : こちらこそお世話になります!